データ品質管理の具体的な成果物(その2)

前回私が担当したブログでは、第8分科会で整理しているDQワークシートの概要をご紹介しました。今回は、その中でも「ビジネスニーズ整理ワークシート」にフォーカスしてご紹介したいと思います。
(※DQワークシートはこちらよりダウンロードいただけます)

実は、第8分科会でワークシートの議論を進める中で、最も時間がかかったのがこの「ビジネスニーズ整理ワークシート」です。

ビジネス要件を品質要件に落としていく部分は、DMBOK1の記述でも抽象度が高く、様々な議論がありましたが、何かしら軸になる整理の仕方が必要ということで、「5W1H」の観点をベースに据えて定義すべき項目を整理しています。

ビジネスニーズ整理ワークシート

このワークシートでは、下記の要素を整理していきます。

  1. ビジネスニーズ(Why/What)
  2. 業務プロセス(Where/When)
  3. 業務プロセス関連組織/担当者(Who)
  4. 情報要求(What)
  5. データ品質要件(How)

今回は、 1.ビジネスニーズ、4.情報要求、5.データ品質要件に触れて、メインの流れをご説明していきます。

ビジネスニーズ(Why/What)

まず、背景、目的とビジネス観点での要求事項を明らかにします。実現したいことを理解する上で、背景や目的が重要なのはもちろんですが、では、要求事項はどの程度まで明らかにすれば良いのでしょうか。

ワークシートのサンプルでは下記のように定義しています(一部抜粋)。

  • 背景:改正派遣法の遵守
  • 目的:客先に派遣する社員に対するキャリア形成制度を維持すること
  • 要求事項:新入社員は3年連続で技術系の研修(8h/年)を受講しなければならない
    →技術系の研修で8h/年を満たしていない該当年次者が居ないこと

要求事項をデータ品質要件につなげていくためには、ここで、必要な情報の「範囲」と「粒度」をある程度明らかにする必要があります。サンプルの要求事項からは下記が読み取れると思います。

  • 範囲:
    • 入社3年目までの社員
    • 年間の研修時間
  • 粒度:
    • 社員個人
    • 研修の分類(技術系など)×時間数(h)

このくらいまで定義できれば、求められる情報が具体的にイメージできるかと思います。

情報要求(What)

要求事項を満たすために必要な情報を整理します。最終的にはデータ品質管理はカラムをベースに実施していくことになるので、一つの要求事項を満たすために必要な情報について項目をイメージしながら分解し、定義していきます。上記のように情報の範囲と粒度を意識すると、定義しやすいと思います。サンプルでは下記のように定義しています(一部抜粋)。

  • 受講者個人を特定できること
    • 社員の年次が正しいこと
    • 研修が技術系/ヒューマン系のいずれかがわかること
    • 受講年度単位の研修時間がわかること

この段階では、特定のデータセットに引きずられないように、業務的に必要な情報の定義にとどめます。要求に適したデータセットを探すのは後続のワークシートで実施します。

データ品質要件(How)

1つの情報要求に対して、データ品質評価軸(正確性、完全性、・・など)を当てて、データ品質の観点から求められることを洗い出します。後で実データを見てから追加することもできるので、まずは、机上で重要なポイントを定義します。

例)情報要求:受講者個人を特定できること
    →【完全性】 社員を識別する項目に抜け、モレがないこと

この他にもこのワークシートで定義すべき項目はありますが、大きくは上記のような流れで進めます。

終わりに

先日の第8分科会では、この「ビジネスニーズ整理ワークシート」を利用して、少し別の角度から、データ整備の進め方について検討されている方々とお話しすることができました。 実プロジェクトで活用されている事例も出てきており、 私達のアウトプットがデータマネジメントに取り組まれる方々の活動に、具体的に寄与できるのは非常に喜ばしいことだと改めて感じています。