海外のDX事情

今回は出張先から書いています。今年に入ってから既に4回の出張になりますが、ほとんどがHoustonとLondonでのカンファレンス、打合せ、ワークショップでした。どこに行っても共通なのは、「如何に業務をDigitalizeするか」に焦点が当たっています。

もちろん現状の業務のDigitalizeという「いわゆるIT化」ではなく、業務とIT技術を同時に刷新する方法が模索されています。

宿泊中のホテルからSt. Paul寺院を見る
Ludgate Hill通りの西

違う言い方をすれば、今までは技術的に難しいという「思い込み」のせいで、「そんなことできるはずがない」とか「いくらかかるんだ!」という箍(たが)が嵌(はめ)められていました。 多くのことがただの思い込みだったのですが、逆にそれは「如何に業務を改善しないか」という理由付けに使われてきたのではと思います。

Londonで行われたAWP(Advanced Work Package)カンファレンスでの筆者の発表風景

先月Londonで開催された建設関連カンファレンスにて、トヨタ生産システム(TPS)と建設業のデジタル化がどのように関係するかの発表を行いました。ご存じのようにTPSが稼働し始めた時代ではPCもインターネットもありません。そんな中で車の生産業務を劇的に改善する方法を思いつき実行したことには驚く他ありません。

TPSは「無理・無駄・ムラ」を徹底的に排除することにより「Lean(余計なものは一切ない)」というコンセプトを実現しています。しかもIT技術やコンピュータではなくカンバンを使えばよかったのです。

ところがこんなにIT技術が進んだ時代でも建設業務が生み出す?無理・無駄・ムラが如何に多いのか。これらを徹底的に剃り落とすことで、なんと40%以上のコスト削減になることが統計上わかってきています。SDGs的に言えば、これらの無駄はCO2になり環境負荷になります。

ところで、IT以前であるTPSと、IT後であるDXとの共通点は何でしょうか。それはデータです。またデータを処理した結果を業務にすぐに反映するプロシージャです。それがITやデータベースを使って行われようと、カンバンと人の手で行われようと、目的である業務改革は達成されるのです。

最近までDXにはデータが不可欠であるという当たり前のことがあまり議論されてきていませんでした。私もエンジニアリングや建設業務の変革を目指す国際カンファレンスに多く出席していますが、特にこの2年間というもの、データマネジメントやデータ品質、そしてアーキテクチャの重要性を繰り返し業界にアピールしてきました。

この辺、実は日本も海外も同じです。違うと言えば、(西洋では)一度重要性に気付くと、その分野を追及し実現するのが早いということでしょうか。DAMAを含め様々な団体がデータに注目した知識を発表しており、当然ながら文献のほとんどは英語で書かれています。データ関連の専門家に頼むときも言語の壁がありません。

一方で日本には何十年も前から知恵を使い工夫を凝らして様々な製品や芸術を生み出してきています。決して日本が不利だとか言うつもりもなく、英語ができないからという「言い訳」を受け入れてしまったら、せっかく我々日本人が持っている才能が無駄になってしまいますね。