NestléのGlobeプログラム

皆さんはNestléのGlobeプログラムをご存知ですか?始まりは2000年前後ですのでもう20年以上前のお話です。Nestlé、Globeで検索してみるとこのストーリーがビジネスケースになっていたりします。

当時のCEOはPeter Brabeckでプログラムを率いたのはChris Johnsonでした。この頃のNestléの収益性が、コカコーラ、ジェネラルミルズ、ケロッグなどに比べ劣っていたことが投資家から問題視されていました。競合14社の販売費の平均が売上比5.8%だったのに対し8.4%、管理費は競合平均が6.2%なのに対し8.3%と高かったのです。

各市場のトップが売上と利益責任を追っており、オペレーションとシステムはバラバラでした。それまでITがリードした改善プログラムが走っていましたが成果を生み出せませんでした。1999年秋のUSでのSAP導入プロジェクトは失敗に終わり商品の出荷が滞ったほどでした。

そこでPeterはグローバルにオペレーションのベストプラクティスを導入しSAPで実装する決断をしました。台湾のマネージャーだったChrisをスイス本社に呼び寄せプログラムのリーダーにしました。最年少の上級管理職、費用負担などをめぐる各市場トップとの軋轢などを乗り越えてプログラムを進めていく様子は、まるで池井戸潤のテレビドラマのようでした。

プログラムの目標は3つあります。
1.調和の取れたNestléビジネス・エクセレンス・ベストプラクティスを導入する
2.“データを会社の資産として管理する”ためにデータスタンダードとデータマネジメントを導入する
3.標準化された情報システムと技術を導入する

目標1は地域ゾーン毎に、どういうオペレーションが最も効果的・効率的かを関係者が話し合って決めていきました。当時、知り合いの日本ネスレのSCM担当者がよくオーストラリアに出張していました。
目標3はSAPの導入です。未だかつて経験したことのない規模のSAPロールアウトになりました。ライセンスは$250 millionと報じられました。

そして目標2です。あれ、いつも聞いていることですね。230を超えるデータスタンダードが定義され、2003年までに市場を跨いで供給されていた品目がマスターデータ・リポジトリに登録されました。品目、得意先、仕入先データの実に半分以上がゴミデータだったということです。

その後Globeプログラムは徐々に各市場へ展開され、様々な効率化プログラムのenablerとして大きなビジネス成果を上げることになりました。

Data management is not a sexy job.

これはChrisがテレビか何かのインタビューに答えていたものです。華々しいSexyなjobに対して、ビジネスに理解してもらうのが難しく、地味な仕事ということだと思います。これは20年経った今も変わっていないと思います。ただ、当時のPeterのようにDXを進めていくためには、データマネジメントが基盤となるので重要である、と感じてくれる経営者が増えてきている感じがします。難敵はやはり今も現場のビジネスマネージャーでしょうか。

Sexyな仕事をやっている人達にデータマネジメントの重要性を彼らの言葉で話しかけて理解してもらい、not a sexy jobをやっている人達を支援しビジネスの成功を持って認めてもらえるような取り組みを、DAMA日本支部で一緒に進めましょう!

参考資料
https://www.nestle.com/sites/default/files/asset-library/documents/library/presentations/investors_events/investors_seminar_2005/globe_jun2005_johnson.pdf