第13分科会(DX分科会)の活動概要のご紹介

  • 第13分科会(DX分科会)の活動概要

本分科会では真のDXに向かうための道程をデータマネジメントと絡めて示すことができないかを検討テーマとして活動しております。

初年度(2021年度)の活動においては、そもそもDXの言葉自体が曖昧ではないかという課題感を起点に、デジタル軸(D軸)とトランスフォーメーション軸(X軸)の二軸に分類して、4象限として表現することに取り組みました。

分科会参加メンバーと意見交換するなかでDXとはビジネス上の変革(トランスフォーメーション)が行われているかどうかを基準としてはどうか。また、現代の変革においてはデジタルデータに対してAIを活用していることが必要要件になるのではないか。という話も行われ、図1のような4象限の図を初期成果物としてまとめ上げております。

図1

   

また、活動2年目の2022年度においては、この4象限における自社の立ち位置を客観的に評価するためのアセスメント表の作成に取り組んでおります。

アセスメントに答えることで、自社の状況やポジションについて関係者で共通認識を図り、真のDX(4象限の右上)に向けて進捗しているのか。逆に、停滞や後退していないかをセルフチェックできるようにすることを目的としています。

そして、そのアセスメントに用いる設問項目に関しては、DAMA日本支部らしく、DMBOK2の各章からの導出を試みています。

  • データマネジメントと組織の変革

こうしたアセスメント表の作成に向けたワークを分科会メンバーで進めていく中で、X軸(変革)に関する設問は当初「第17章 データマネジメントと組織の変革」のみから導出する想定で考えていたのですが、DMBOK2の各章を読み込むなかで、第17章以外にも組織や変革に関する記載が多く含まれていることに気付きました。

例えば以下のように非常に多くの章(節)で組織、文化、変革に触れられています。

第3章 データガバナンス

 4.1 組織と文化

第4章 データアーキテクチャ

 5.2 組織と文化の変革

第6章 データストレージとオペレーション

 5.2 組織と文化変革

第7章 データセキュリティ

 5.2 組織と文化の変革

第8章 データ統合と相互運用性

 5.2 組織と文化の変革

第9章 ドキュメントとコンテンツ管理

 5.2 組織と文化の変革

第10章 参照データとマスターデータ

 5組織と文化の変革

第11章 データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス

 5.4 組織と文化の変革

第12章 メタデータ管理

 5.2 組織と文化の変革

第13章 データ品質

 5.2 組織と文化の変革

第14章 ビッグデータとデータサイエンス

 5.4 組織と文化の変革

第15章 データマネジメント成熟度アセスメント

 5.2 組織と文化の変革

このようにDMBOK2の多くの章で「組織と文化の変革」に触れられている大きな理由の一つとしては、データマネジメントに求められる多くの活動が従来の業務プロセスや組織の延長線上には組み込まれておらず、企業に変革を伴う新たな業務プロセスや組織の設計を求めているからではないかとも想像します。

  • DXとDMの関係性を議論したい方はぜひ第13分科会へ!

変革の取り組みは非常に長い旅になるとも言われています。だからこそ、その活動を継続的に進めていくためにも、途中途中で小さな成功を祝うことの重要性が謳われています。

本分科会は参加者各自でワークすることを重要視して活動していますが、アセスメント表の作成は試行錯誤をしながら時間をかけて進めております。だからこそ、途中小さな成功を祝うことを忘れずに、そして、真のDXに向かってDMBOK2から知見を得るという最終ゴールも定期的に振り返りながら進めていきたいと思います。

本分科会への活動にご興味、ご関心を持って頂いた方、お気軽にご参加をご検討ください。お待ちしております。

以上

データマネジメント・フレームワークは役立つのか?

今回はデータマネジメントフレームワークについて考えてみたいと思います。初めにDMBOK2のフレームワークを簡単に紹介し、次に新たなフレームワークを検討してみたいと思います。

DMBOK2のデータマネジメント・フレームワーク

DMBOK2の第一章には、いくつかのデータマネジメント・フレークワークが紹介されています。その代表格は右図の「DAMAホイール図」でしょう。
このフレームワークは11個の知識領域をハイレベルで表現しているものですが「異なる知識領域間の関係を記述してない」 という指摘もありました。

その問題に対処し再構築されたものが、左図の「DAMAホイールの発展形」になります 。
この発展形が生まれる経緯や、その他のフレームワークに関してはDMBOK2の第一章に書かれていますので参照してください。

フレームワークで表現できないか?

このいずれのフレームワークも素晴らしいもので、全く否定をするつもりはありませんが、筆者が初めてDMBOKに触れた際に、以下のような感想を持ったものでした。

  • DWHやBIは、データマネジメントというより、マネージされたデータを使う側ではないか?
  • データ・セキュリティとは言うが、セキュリティはデータだけではなく、もっと広い視点が必要ではないか?
  • データマネジメントそのものであるもの、インフラよりのもの、業務よりのものも含まれており、DMBOKはちょっとそのカバー範囲を欲張りすぎているのではないか?

そこで、各データマネジメント領域における以下のような要件をフレームワークで表現できないか、自分なりに(半分お遊びで)考えてみました。

  • データマネジメント組織が直接関わるべき領域と、他組織が中心となる領域を区別する
  • 業務的要素とインフラ的要素(IT的要素)を区別する

新データマネジメント・フレームワーク検討

初めに、業務組織、IT組織、データマネジメント組織と、大きく3つの組織があると仮定した上でベースを考えてみました。
右図の「各組織のカバー範囲」に示すように、データマネジメント組織がカバーすべき範囲は、業務よりのものからITよりのものまであると考えられます。

次にデータマネジメントに関連する構成要素を洗い出してみました。これはDMBOKの知識領域も参考にしています。
ここに挙げたもので必要十分ではないかもしれませんが、まずはこれをベースとしてみます。

そして、このこれらの構成要素を、 「各組織のカバー範囲」 の図にあてはめていきます。例えば以下のように

  • セキュリティは、データマネジメントというより、業務とITにまたがった全体に関わるものなので、一番左に…
  • データガバナンスはもちろん一番右に、リファレンスデータは業務よりの話なので上の方に…

これが新データマネジメント・フレームワーク!?

そうして考え出したのが以下のフレームワークとなります。

各構成要素をこのような配置にしたのは、深く考えたものもあれば、やや適当に配置したものもあります。今回は説明は省略させていただきます。

各構成要素の色は、右図のような意味を表しています。上図と右図を一枚にまとめて表現することもできますが、煩雑になりそうなので、今回は一旦見送りました。

DMBOKには「フレームワークは新たな視点を提供する」という主旨のことが書かれていますが、いかがでしょうか?
このフレームワーク自体は大したものではありませんが、今回自分でフレームワークを考えてみて、その意味がわかったような気もしました。

皆さんも色んな視点でフレームワークを検討し直してみるのも良いかもしれませんね。

DMBOK第二版 読み方のポイント

DMBOKの厚さをどう攻略して読むか

DMBOK第二版日本語版が出版されてから、4年以上が経過しました。
この間、DXに伴うデータ利活用ニーズの高まりと共に増刷を続けています。
SNSなどの反応を見ていると、当初の読者層はコンサルタントやSIer企業の方が多かったものの、最近ではユーザ企業の方からも多くの反響をいただいています。翻訳に関わったものとしてうれしく思っています。

ただ、はじめてデータマネジメントを学ぼうという方からは、
「650ページを超える書籍を全て読みきるのは大変。効率良い読み方はありませんか?」
と相談されることも増えてきました。
相談される方から伺ってみると、「効率良い読み方」として期待されているのは、
・すでにデータマネジメントに関わる課題を抱えている方が、解決策を早く知る方法
・データマネジメント全体を知識として学びたい方が、より深く理解しやすい方法
の大きく2つに分かれるようです。

前者については、本ブログ以外にも参考となる記事が他サイトにあります。

『DMBoK2の歩き方とデータガバナンスの位置付けを考える』
https://dama.data-gene.com/tag/dm-walking-map/

『全672ページの超大作、データマネジメント知識体系ガイド「DMBOK2」の攻略法』
https://japan-dmc.org/?p=19468

『日本語版DMBOK2を読む』 https://metafind.jp/2018/12/10/reading_dmbok2_in_japanese/

以下では、後者の視点について掘り下げて、いわばDMBOKを知識教養として学ぶための読み方のポイントをご紹介します。

章をまたいで用語や概念が解説されていてわかりづらい

DMBOKの、たとえば参照データとマスターデータのような特定の章について読んでいると、メタデータやデータ品質、データガバナンス等の他の章に関わる説明が出てきます。
DMBOKをデータマネジメントの「教科書」として読みたい方は、まずここで立ち止まってしまうようです。歴史の教科書であれば、まず古代から中世、近代と章毎に理解でき、先行章の理解が後続章の理解をより深めてくれますね。
しかしDMBOKはそのような作りではありません。(仮に歴史の教科書をDMBOK式に書き変えるならば、「歴史とは」という章ではじまり、「哲学宗教」「政治統治の方法」「共同体の形態」といった章構成になりそうです。)

DMBOKは主要11章を「知識領域」と呼んでいます。この領域というものはデータマネジメントに関する知識を①データの種類②性質③管理手段の違い※でまとめた単位です。(※たとえばそれぞれ代表的な章として①参照データとマスターデータ、②データ品質、③データモデリングとデザインが挙げられます。)
データ品質と一言で言っても、メタデータやマスターデータの品質もあればそのどちらにも該当しない品質もあります。これらはみな、DMBOKでは別々の章に書かれています。そのため、「DMBOKでデータ品質に関わる知識を深めたい」という方は、いずれは650ページすべてを読まなくてはと考えがちです。
とは言え、650ページ全て読み込むのはハードルが高いというのが今回の主旨でした。

最初は章単位ではなく”節”単位で読み込むのがオススメ

DMBOK第二版の第3章から第15章までの各章は、どの章もほぼ以下の構成です。

第1節 イントロダクション
  1.1. ビジネス上の意義
  1.2. ゴールと原則
  1.3. 本質的な概念
第2節 アクティビティ
第3節以降 ツール、技法、導入ガイドライン、ガバナンス、文献 等

第3章 データガバナンスの目次
第3章 データガバナンスの目次

第1節は、その知識領域の基本的な用語と考え方を紹介しています。
第2節は、その領域で一般的に実施される活動と手順が解説されます。
第3節以降は、DMBOK第二版英語原本が書かれた2015年時点で、その領域について広く普及していたツールや技法、ガバナンス方法が書かれています。
英語原本が書かれてからすでに7年が経過しているため、現在からすると第3節以降の内容に古さを感じるものもあります。
一方で、第1&2節の内容は、具体的なツールや方法論ではなくコンセプトを書いているため、これからも参考になります。

全くはじめてデータマネジメントに触れるという方は、まずは第3~15章の用語の解説を読み通すと良いでしょう。そうすれば、各章に分かれて記述されている知識が、頭の中で紐づくはずです。
ひととおり用語についての知識が身についた方は、次に、章を横断して第2節を読むことをおすすめします。第3節以降の知識を前提には書かれていないので、第2節を繰り返し読むだけでも具体的な活動内容について理解できるはずです。

ちなみに、第1/2/16/17章は、知識領域横断で考慮するべき内容が記述されています。

  • 第1章:第3~13章全体を通した、データマネジメント全体の目的と原則
  • 第2章:データを取り扱う際のリテラシー
  • 第16&17章:データマネジメントを成功させるための組織文化

これらは他の章に比べてより抽象的な記述が多いので、最後にまとめて読むと良いのではないでしょうか。

まとめ

DMBOKを購入したものの、その厚さと難解さに心が折れて「積読(つんどく)」していませんか?
また、DMBOK以外の、ほどほどの厚みで読みやすい本でデータマネジメントを学んだものの、物足りなさを感じていらっしゃいませんか?

そうした方はぜひ、章を横断して第1節の基本的な用語の解説を読んでみてください。第1節だけ読み返すなら、それほどボリュームはありません。
もう少し踏み込んで、どんな活動をするのか学びたい方は、第2節を読み進めてください。

そして次のステップとして、DMBOKの基礎用語や活動の解説を参考に、みなさんの所属する組織やお客様に対して、DMBOKをベースにデータマネジメントを実践してはいかがでしょうか。