デジタルガバナンスとは? ガバナンスについて

デジタルタガバナンスやデジタルガバナンス・コードというワードをよく耳にするようになった。デジタルガバナンスとはどういう定義なのか、デジタルガバナンスの中でデータガバナンスはどのように位置受けられているか気になったので、調べてみた。
本稿では、この結果とガバナンスに関する私見を述べる。

デジタルガバナンス

経済産業省から出された「デジタルガバナンス・コードの策定に向けた検討」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_governance/pdf/report_001.pdf)によると、デジタルガバナンスとは、”デジタルトランスフォーメーションを継続的かつ柔軟に実現することができるよう、経営者自身が、明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で、組織・仕組み・プロセスを確立(必要に応じて抜本的・根本的変革も含め)し、常にその実態を掌握し評価をすること。”と定義している 。
また、具体的には、以下の図のような5つの行動原則からなる。

      出所:経済産業省,デジタルガバナンス・コードの策定に向けた検討

この5つの行動原則に基づいて、経営者自身が明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で組織・仕組み・プロセス等を確立・実行・評価・改善することで、「2025 年の崖」の克服やビジネスの高度化・創出・変革の推進を目指すことを期待している。

データガバナンスに関する記載は、原則2の中の【データ活用のための戦略の策定】の解説 で、「DX はデータ利活用が重要であるため、データの重要性やガバナンス、データ戦略等の内容を取り入れることが望ましい。」とある。

また、原則4の中の【業務の仕組みやITシステム・データの適正化】の解説で、データに関して「クラウドや社内 API 等のデジタル技術の部門横断的な活用に向け、既存の業務の仕組みや IT システム・データの見直し・シンプル化・再構築を行うとともに、IT システム・データ に関するアーキテクチャ等の適正化を行う。」とあった。

DXでは、「データやデジタル技術を活用」がキーワードになっているが、デジタルガバナンスの解説の中では、上記の他には具体的なデータに関する指針は見当たらなかった。

デジタルガバナンス・コード

昨年の11月19日に経済産業省から「デジタルガバナンス・コード」(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html)が出された。デジタルガバナンス・コードとは、企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応を取りまとめたものである。
以下の4つの柱立てについて、(1)基本的事項 ①柱となる考え方②認定基準、 (2)望ましい方向性、 (3)取組例が述べられている。
 1.ビジョン・ビジネスモデル
 2.戦略
  2-1.組織づくり・人材・企業文化に関する方策
  2-2.IT システム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策
 3.成果と重要な成果指標
 4.ガバナンスシステム

企業は、このデジタルガバナンス・コードを遵守していることを投資家や従業員、取引先などといったステークホルダーに対して開示することによって、自社が「DXを進めるための仕組みを持っている」ことをアピールすることができる。
さらに、このコードを守っている企業であることを客観的に評価し、DXを進めるための準備が整った“DX-Ready”企業として認める「DX認定制度」も開始されている。
デジタルガバナンス・コードは、企業のDXの格付けに使われるものと感じた。

ガバナンス

DMBOK第2版のデータガバナンス章で、ガバナンスは「統治」と謳っている。データガバナンスを立法(ボリシー、規定、アーキテクチャの定義)、司法(課題管理と報告)、行政(保護とサービス、行政責任)と三権分立の観点から解説している。

ガバナンスというと「ガバナンスを効かせる」と使われるように規制の概念が強く、データガバナンスもデータの規制と捉えられ、なかなか言葉として浸透しなかったように思う。DMBOKでは、データガバナンスを中心にデータマネジメントの知識領域があり、ガバナンスを規制と捉えていたメンバには、DMBOKのホイール図は受け入れ難かったのではないか。

経済産業省から出されたデジタルガバナンスは、明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で、組織・仕組み・プロセスを確立し、常にその実態を掌握し評価するという一連の取り組みの統制である。

デジタルガバナンスやデジタルガバナンス・コードが認知されていくことで、ガバナンスの捉え方が変わり、データガバナンスに関しても規制だけではない全体の取り組み、統制であるという意識に変わり、データガバナンスの概念が正しく浸透していくことを願う。

以上

データがつながれば社会が変わる

 近年、データのつながりの拡大を肌身で感じることが多い。例えば、自宅PCによく検索した商品や類似の商品が、突如ポップアップされる。これは、自宅PCと商品サイトが検索履歴のデータでつながっているためである。また、スマフォを持って外出して地図情報から目的地の検索をかけると、近くのレストランやドラッグストアなどの広告が入り、ドラッグストアなどは検索すると割引チケットも入手できる。これは、自分のスマフォの位置情報とレストランやドラッグストアの地図情報を含むサイトがつながっているからである。
 このように、販促を目的とした情報のつながりは急速に拡大している。

マイナンバーは与えられたけれど

 マイナンバーは、2015年10月5日から、個人番号の指定が始まり、2016年1月からは、行政手続における個人番号の利用が開始された。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%80%8B%E4%BA%BA%E7%95%AA%E5%8F%B7

 すでに5年近く経過しているが、このマイナンバーが、どれほどつながりをもっているだろうか?
市区町村の手続きにマイナンバーを使うことで、一部の書類提出は不要な経験はあったが、身近で 便利になった、よりよいサービスを受けた実感は全くない。どちらかというと、マイナンバーを人に知られないため極力提示しない、マイナンバーカードは持ち歩かず自宅に保管など、秘守の扱いに注力している。

 個人を特定するIDがなければ、データのつながりは初められない。個人のデータのつながりの出発点として、マイナンバーはなくてはならないものである。
 個人情報保護の観点があまりにも強いため、マイナンバーの利用拡大はなかなか進んでいないと感じる。マイナンバーがしっかり管理され、漏洩や悪用ができない環境であれば、生まれた赤ちゃんにマイナンバーを付与する手続きだけで出生届は不要となり、年齢も把握できる。また、親のマイナンバーとつなげれば戸籍や住民情報に自動で登録ができる。年齢も把握できるので、小学校入学時に自動的に案内を出すことも可能となる(すでにこのようになっている国もあると聞いている)。このように、マイナンバーを管理し、マイナンバーをつなげることで、役所の管理作業の大幅な軽減の他に個人へのサービスが拡がる期待が膨らむ。

製品に不具合が起きた。この製品を作った工場のラインはどこ?

 これがすぐに把握できる会社は、少ないだろう。工場で作られた製品は、多くは工場⇒倉庫⇒販売店舗⇒客 のような流れで客にわたる。個々の製品にマイナンバーのような製品を特定するIDが付与されていないため、工場での製品番号、倉庫で管理する番号、販売店舗の商品番号がその場所の特有な番号で管理されている。このため、逆に客に渡った製品が客⇒販売店舗⇒倉庫⇒工場を特定するのに、個々の番号の対照表から辿らなければならず、時間がかかる。一気通貫のシステムになっていないためである。

 工場でラインを特定するには、その製品がいつ、どのラインで、どの部品を使って組み立てられたかの情報も必要となる。本来、やりたいことは、同一な不具合が起きることが想定されるため、その工場ラインが特定できたら、そこで同時期に作った他の製品がどの客に渡っているかを知り、その購入客に不具合を知らせ、重大な不良であれば使用をやめるように一刻も早く伝えることである。

 このように製品が特定できるIDを付与し、つなげていかないと十分なサービスを客に提供できない。

個人やモノの特定ができれば、サービスが膨らむ

 個人やモノを特定するIDの必要性は、認識できた。このIDにより、データが迅速につながっていけるからである。現在、個人のPCやスマフォが個人を特定するものとして使われている。しかし、個人のPCやスマフォを換えてしまえば、そこで個人の特定は途絶えてしまう。
 マイナンバーが個人を特定できるIDとして付与されたことは、意義深い。データをつなげる準備はできたのだ。

 マイナンバーのセキュリティが守られる環境となれば、データがつながることでサービスの観点から夢は膨らむ。マイナンバーカード一つあれば、買い物、ホテルのチックイン、交通機関への乗車などは、このカードをタッチするだけでできる。また、急病で病院に運ばれた際に病歴や毎日飲んでいる薬などを瞬時で把握でき、適格な治療が受けられる等々。

 このような社会を早く実現するためにも、データをつなげていく活動にさらに
関心をもっていただき、そのような機会があれば実活動に注力していただきたいと思います。データをつなげる意識の醸成が加速すれば、未来は急速に変わっていくと信じます。

以上

DAMA-JとJDMC

国内のデータマネジメントを推進する団体は、企業や企業のユーザ向け研究会を除いて、DAMA-JとJDMC(Japan Data Management Consortium)がある。JUAS(Japan Users  Association of Information Systems)の中にもデータマネジメントの研究会があるが、JUAS自体はデータマネジメントに特化した団体ではないので、ここではDAMA-JとJDMCについて述べる。

JDMCは2011年4月に設立され、現在9年目を迎え、会員数200を超える団体となっている。私はJDMC設立からJDMCの研究会活動他に参加しており、DAMA-Jでの活動より長く携わってきた。
近年、JDMCのメンバやデータマネジメントを勉強しようとするメンバから、DAMA-JとJDMCはどこが違って、どちらに参加した方がよいのかと相談を受ける機会が多い。私見になるが、DAMA-JとJDMCの違い(棲み分け)について、今回は述べていく。

DAMA-JはDAMA Internationalでの活動を日本で推進することが主な活動となる。具体的には、DMBOK(DATA MANAGEMNT BODY OF KNOWLEDGE)の普及が主要活動としてあげられる。また、毎年ADMC(Asian Data Management Conference)を1日のカンファレンスとして開催し、海外からのデータマネジメント有識者やDAMA-Iからメンバを招聘して海外の事例も含め紹介している。
まとめると、DMBOKの普及、海外からのデータマネジメント有識者を招いての講演の提供はDAMA-Jの主要活動であり、これはJDMCの活動にはない。

JDMCは、企業、行政機関、大学など広い範囲のデータマネジメントに関わるメンバが参画されている。JDMCが主催するデータマネジメント2019では、1日のカンファレンスに1000名を超える参加者があった。2020年はコロナ対策として、急遽Webによる開催に変更したが、2019年の参加者を超えるメンバが参加された。
JDMCでは、毎年、データマネジメントにおいて、他の模範となる活動を実践している企業・機関などの中から優秀なものを選定しデータマネジメント賞を送呈している。JDMCの定例セミナーで、データマネジメント賞を受賞した団体からの推進活動の内容も聞くことができる。
また、青山学院や横浜国立大学で、学生に向けたデータマネジメントに関する講義も各大学教授からの依頼により、JDMCの有志メンバが講師となって開催されている。

上記以外にJDMCの最大の特徴は、研究会活動の充実にあると思っている。「デジタルマーケティング」、「MDMとデータガバナンス」、「AIとIOT」など特化した分野での研究会活動があり、この他に私が所属する「データマネジメントの基礎と価値」の研究会では、研究会メンバで合宿も含めて多くの議論の時間を費やし、データマネジメント概説書(JDMC版)を作成し、発刊に至っている。
データマネジメントに関わるメンバ(初心者を含む)が抱える課題をできる範囲で共有し、メンバと議論して気づきを得る場を提供しているのが、JDMCの特徴と思う。

DAMA-Jは有識者が多く、データマネジメントの初心者には参加は敷居が高いという声をよく聞く。ある程度のデータマネジメントの知識がないと、また、DMBOKを読んでいないとDAMA-Jに個人会員として入るには躊躇われるという声である。

DAMA-Jでは、この声に応えるため、「DMBOKに関する研究会」も立ち上がり、各章を1回の研究会の中で説明と議論を行う場が提供されている。
また、DAMA-J会員以外にもDMBOKの紹介を行う機会やデータマネジメントの概説を行う機会が企画されている。

私見だが、データマネジメント推進するメンバは、DMBOK(現在はDMBOK2)を読んでおくことは、必須であると思う。日本語版も出ているので、まずは購入いただき、読んでいただきたい。ただ、600頁を超える大書であるので、重要ポイントなどの概説を聞いて、読み込んでいく支援をDAMA-Jとしてはさらに行っていく必要があると考えている。

冒頭の「DAMA-JとJDMCはどちらに参加した方がよいのか」という質問に答えるとDAMA-J、JDMCともに参加し、DAMA-JではDMBOKの知識の習得と海外のデータマネジメントの推進事例の把握、JDMCでは自分のデータマネジメントに関する悩みにあった研究会に参画し、メンバとの議論による気づきの発見を行っていただきたい。

今までは、DAMA-JとJDMCでの交流はあまりなかったが、今後は国内でのデータマネジメントの推進をさらに加速するために手を組みあうべきと思う。一つの例として思っているのは、JDMCでDAMA-JからDMBOKの紹介や講義が行えないかである。DAMA-JとJDMCが共存してその相乗効果をあげられるよう、微力ではあるが努力していきたい。

以上