データドリブン経営とデータマネジメントの関係性

はじめに

今回はデータマネジメントとデータドリブン経営の関係性を考察してみたいと思います。

皆さんはデータマネジメントとデータドリブン経営にはどのような関係性があると考えますでしょうか。何となく関係がありそうではあるが、どう説明してよいか迷うなぁ。という感想を多くの方が抱くのではないかと想像しています。

今回ブログ執筆の機会をいただきましたので、皆さんと一緒に考えるひとつのきっかけになればと思い、どのような関係性があるかを私なりに考えてみました。

データマネジメントフレームワークとしてのDAMAホイール図

考えるに際し、まず最初にデータマネジメントに求められる知識領域を定めたDAMAホイール図をご紹介します。

(図1)

この図1はDMBOK2の第1章に記載されているデータマネジメントの知識領域を定義する「DAMAホイール図」と呼ばれる図です。


DMBOK2は17章構成で記述されており、各種のフレームワークを定義していますが、データマネジメント知識領域をもっとも良く表している図がこのDAMAホイール図です。

DAMAホイール図は中心にデータガバナンスが置かれ、各知識領域は成熟したデータマネジメントに必要な機能を示しています。

このホイール(Wheel)という言葉ですが日本語に訳すと「車輪」にあたりますが、 タイヤに例えると次のようなイメージ(図2)になるのではと思います。

(図2)

 

データドリブン経営とデータマネジメントの関係

次にデータドリブン経営という言葉をみていきたいと思います。

データドリブン経営とはシンプルに言えば従来型のKKD(勘と経験と度胸)に頼った意思決定から、データに基づいた経営的な意思決定にシフトすることと、定義できるのではと考えます。

また、データドリブン(DataDriven)を日本語に訳すと「データ駆動」にあたりますが、データを動力源(燃料)として、いかに迅速に経営的な意思決定を行うことができるかが 多くの企業の関心ごとにもなっています。

このデータドリブン経営をビジネスゴールに向かって進む車の運転に例えた場合、 その安全・安心・快適なドライブを下支えする車輪の位置づけとして、DAMAホイール (=データマネジメントの知識定義)が存在するのではと考えます。(図3)

普段、車の運転をしている際は目にすることがないため、ホイールの存在を意識することは稀ですが、非常に重要な役割を担っていることは車を例にすると想像いただけるのではないかと思います。

(図3)安全・安心・快適なドライブを下支えする車輪


現在、コロナ禍で私たちを取り巻く環境は急激かつ大きく変化してきています。このビジネス変化のスピードに追随してドライブしていくためにも、足元を支える車輪としてのDAMAホイールの内容を理解することはきっと皆さんのお役に立つものと考えます。

皆さんの所属する企業、または提案先、支援先の顧客は期待するスピードでデータドリブン経営を実現できておりますでしょうか。また、その足元を支えるデータマネジメントに関する取り組みはどのような状況でしょうか。

経営から思ったようなスピードが出ていない。間違った意思決定をしていないか不安だという言葉が聞こえたら、一度、DAMAホイール図を参考に自社の取り組みを点検いただくのも一案かもしれません。

ひょっとしたら、(図4)のようにデータマネジメントに関する考慮が欠けていて、多角形の車輪で走っていることに起因し、データドリブン経営が思うようなスピードで進んでいないのかもしれません。

(図4)



おわりに

データマネジメント知識領域を抑え、自社のデータドリブン経営のスピードを阻害している要因(車輪の不備部分)を見つけ、地道に1つずつ改善を積み上げていける企業こそが、真にデータドリブン経営を実践する企業に進化できるのではないかと私は考えます。

DMBOK2の11の知識領域にどういった内容があるのか俯瞰して学びたい皆さん、ぜひ、DAMA-Jの活動を体験してみてください。

一緒に意見交換できることを楽しみにしております。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)とデータ・マネジメント(DM)③

今回は、Transformationのお話です。
またまた英語の語源からですが、Transformationは、Trans+Formの合成語です。
https://www.etymonline.com/word/transform#etymonline_v_16881 には、以下のように書かれています。
mid-14c., “change the form of” (transitive), from Old French transformer (14c.), from Latin transformare “change in shape, metamorphose,” from trans “across, beyond” (see trans-) + formare “to form” (see form (v.)). Intransitive sense “undergo a change of form” is from 1590s. Related: Transformedtransforming.
要は、Formを変えること、Formとは形や様式ということです。

ちなみに、語源という意味では、Dataの成り立ちは以下です。

つまりラテン語で与えるもの、もしくは与えられるものであり、事実や既成のものという意味ですね。ちなみに、Dataの単数形がDatumですから、DataはPeopleのように複数形として扱うのが正式とのことです(英語圏でも随分議論がありますが)

はい、失礼しました。Transformation話でしたが、DMBOKでこのことにかなり迫っているのが、第17章のChange Management(変革管理)です。2018年のADMCでも取り上げましたが、この章では以下がポイントだと思っています。

一番陥りやすいミスは以下のようなものでしょうか。
まず、変革は「人」から始まるということに真っ向から挑戦しるのが以下の発言です。
◆ DXには予算をいくら取ればいいのか計算しろ
◆ DXをやるにはまず組織を作らなければ
◆ DXをやってくれるITベンダーを連れてこい
◆ DXができるソフトウェアを調達しろ、予算は取ったから
◆ 日本をデジタル化するぞ、そう「デジタル庁をつくればいいのだ」(笑

次に斜めに構えている人が言う言葉として・・・
◆ DXなんてどうせまたITベンダーが作ったBuzz Wordだから、やっている振りだけしておこう
◆ うちの会社は昔からDXはやっているよ。PC入れたのも早かったしね
◆ うちの会社は伝統を大切にする、DXはうちには合わないよ
◆ 書類を全部ScanしてDX・・・という古いジョークは忘れましょ(汗

余談ですが、世の中には変わらなくてもいいことが不自然に変わることがあります。例えば、
◆コンビニでビニール袋をくれなくなった(特に日本ではこれが地球温暖化を防ぐのにほぼ何の役にも立たない。つまる単なる値上げ)
◆ そもそも日本の水道水は一番安全なのに、なぜかミネラルウォーターを買うようになった
◆ (ここは賛否両論ありますが)喫煙人口が激減したのに肺がんは減らない?? ただ・・・人に迷惑をかけてはいけないので非喫煙者の前では吸わないように(汗
◆ ゴミの分別が余計にコストがかかるって知ってました?

ちなみに上に上げた変革を起こすのには莫大なマーケティング戦略、洗脳、プロパガンダが必要でしたけど。 こんな変化を起こせるなら、Digital Transformationも簡単ですねー。

一方で、Backward Compatibilityという言葉があります。ITの方はよく知っていると思いますが、ソフトウェアのバージョンが上がっても、昔書いたソフトは依然としてそのまま走るということ。特にMicrosoftはこのコンセプトを重視してきました。Windowsのバージョンが上がっても昔のソフトはそのまま走る。

皆さんお気づきのように、いくら何でも20年前のソフトは走らないよねー。ただ世の中のTransformationはもっと遅く、Backward Compatibilityに従っているようです。JR(昔の国鉄・・・知ってました?)でSuicaがメジャーになった今も切符をまだ買えますよね。コンビニでスマホ決済ではなくて現金でモノが買えますよね。

私に真面目にTransformationとは何かを言わせると、それは「脱皮」だと思います。昆虫などは一生の内にでも脱皮しますが、 生物は何世代にもわたって進化します。多くの場合は、Backward Compatibilityは保たれないようです。つまり、いったん蝶になった幼虫のようには生きられないし、人間はもう水の中では呼吸できないですよね。

DMBOKの第17章でも、人々に変革についてきてほしいのなら、戻り道をふさぐことだと書いてあります。つまりBackward Compatibilityへの道を断つということですね。

でも駅で切符が買えなくたったらどうしたらいいかわからないなー。

ESGとデータマネジメント

昨今、ESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))への取り組みを強化する企業が増えてきています。

今まで、ESGとデータマネジメントはあまりつなげて捉えていなかったのですが、先日、ESGへの取り組みはデータ活用とも言える、という話を耳にする機会があり、認識を新たにしました。ということで、今回はESGとデータマネジメントについて書いてみたいと思います。

まず、ESGへの取り組みが強化されている背景ですが、機関投資家にESG投資という考え方が浸透してきたことがあります。これは、財務情報だけでなく、ESGへの取り組みも考慮した投資の方法で、企業の財務利益とESG活動を相反するものとして捉えていないことが特徴です。ESGに取り組んでいる企業の方が、中長期的な業績が良くなる&リスクが低いという考え方をとっています。

では、こうしたESG投資の際に、投資家はどのようなデータを活用しているのか。ここでは、投資家へのデータ公開の媒体の一つである統合報告書を見てみたいと思います。

統合報告書は、企業が、財務資本だけでなく、知的資本、人間資本、社会関係資本、自然資本といった非財務の資本も含めて、どのように長期的に価値を創造していくかを説明するもので、非財務の指標の例としては、下記のようなものがあります。

CO2排出量
社外取締役比率
女性取締役比率
離職率
、、、

上記はごくごく一部ですが、すぐにデータとしてとれそうなものと、そうでないものがあるのではないでしょうか。さらに、すぐにデータがとれそうな部門とそうでない部門があるかもしれません。

CO2排出量について考えると、物流、工場の生産、拠点の電力消費、グリーン調達など、企業全体で出そうとすると、多くの部門に関連する指標になります。

実態を表す、一貫性のある品質の高いデータを元にすることで、投資家もさることながら、自社の長期的な価値創造のためによりよい意思決定ができるようになるはずです。

部門横断でデータを収集・統合し、品質の高いデータをアウトプットする、、、データマネジメントの知識、技術が多いに役立つのではないかと思います。

最後に、従来、環境に関する活動は、利益とは反するが、企業の責任として実施すべき、という考えが一般的だったと思います。今更ですが、大分様相が変わってきており、良い方に動いているなと感じています。一過性のブームではなく、定着した考え方になっていくことを期待しています。

データ品質分科会を続けてきて…

 品質分科会は2013年から開催されていて、DAMA-Jでは最も古い分科会です。よくもまぁ飽きもせず7年もやってきたものだと我ながら感心しています。

 ただ、参加されている方は一部の方ですし、新規入会の方も多くなってきましたので、期変わりのこの時期に改めてこれまでの経緯を含めて、ご紹介をしたいと思います。

 品質分科会は、もともとは第4分科会「意思決定に寄与するデータモデル研究会」の派生分科会として発足しました。                   第4分科会は、経営層が意思決定をするに当たってデータを活用するために必要なデータモデルとは何か?ということを議論・研究する分科会でしたが、そもそも経営層がデータを活用して意思決定をすることが少ない、データ活用するためのデータモデル整備に投資をすることに理解を示さないなどの点が問題で、どのように理解してもらうかというような議論をしていました。

 それはそれで重要な議論ですが、そこに一足飛びに進むことは日本の現状では難しいだろうとの思いもあり、それならまずは経営層にデータ品質問題の認知をしてもらい、品質改善マネジメントからデータマネジメントの機運を作っていけないかということで、データ品質分科会を発足させていただきました。

 品質分科会で、まず最初に取り組んだのは、DMBOKのデータ品質の章を読み込んで、具体的な内容と対比して理解することでした。 DMBOK1のたかだか60ページの読み込みでしたが、抽象的な表現が多いDMBOKの記述は難解で、参加者に一定の理解が得られるのに実に丸3年かかってしまいました。その頃は成果物を産まない地味な分科会ということで不人気分科会でして、2-3名の参加での開催も少なくありませんでした。

 しかし、それでも続けたおかげで記載内容の意味が整理され、各アクティビティで実施すべきことがはっきり見えてきたのだと思いますし、その後のDQワークシートのまとめにも大いに役に立ちました。

 DQワークシートについては、2020-08-03の井桁さんの記事に概要が記載されていますのでここでは割愛しますが、DMBOK2の内容反映まで含めてやはり4年かかってしまったもののデータ品質マネジメントを行う上では初めての具体的資料ができたのではないかと思っています。今後は、このワークシートの使い方を平易にまとめた資料が作れれば良いなと考えています。

 と、これまでの分科会活動を振り返って思うところは、DMBOKはさらっと読めば答えが得られるというものではなくて、活用するには十分な理解や解釈が必要だ、ということです。

 DMBOKで使われる用語やレトリックに含まれる意味は多岐に渡り、具体的な事例でどうしたら良いかと考えた時に有識者でさえ「ケース・バイ・ケース」という回答になることも多いようです。 しかし、それでガッカリしてはいけません。DMBOKで語られていることの本質的でシンプルな意味を解釈し理解できていれば、具体的な課題にぶち当たった時に、その理解を軸にどうすれば良いかの応用が効くと思います。

 このスピードが求められる時代、すぐに役に立つ何かを求められがちですが、しっかりとした知識体系をわが物とするためには「急がば回れ」でDMBOKをしっかり読まれること、読んだ解釈を多くの方と議論して理解することが重要なことだと思います。 DAMAの分科会は、今後もそういったことができる数少ない場でありたいと考えています。

政府の「デジタル・ガバメント実行計画」に”データマネジメント”が明記されたこと

令和2年12月25日に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」では、行政機関がデータマネジメントを推進すべきことについて明確に言及されました。
政府関係者の皆さんやCIO補佐官の皆さんに対して、10年以上長きにわたって何度も何度も行政におけるデータマネジメントの必要性を訴え続けてきた私としては、「うれしい」という素直な気持ちと「やっとか」という忸怩たる思いが交錯する複雑な心境です。

実行計画では以下のように記されています。

※「デジタル・ガバメント実行計画」(令和2年12月25日 閣議決定)より該当箇所抜粋

(6)データマネジメントの推進(◎環境省、内閣官房)
4.8.7 行政データ連携の推進
行政データ連携の推進、行政保有データの100%オープン化を効率的・効果的に進めるためには、各府省において保有するデータの全体像を把握し、連携・オープン化するデータの優先付けを行った上で、必要な情報システム・体制を確保し、データの標準化や品質管理等を組織全体で進めていくことが必要である。
そのためには、そうした一連のプロセスを体系的に進めるための戦略を定め、取り組んでいくことが重要である。
環境省では、政府におけるデータマネジメントの試行的な取組が進められており、今年度中に「環境省データマネジメントポリシー(仮称)」を策定し、 2021 年度(令和3年度)以降同ポリシーに基づき行政データ連携の推進や、環境省保有データのオープン化の取組を進める。
こうした取組の実施状況も参考にしつつ、政府におけるデータマネジメントの在り方を検討する。

これまでも「デジタルガバメント基本方針」や「官民データ活用推進基本法」などの公式な取り組みの方針等もあったのですが、「データマネジメントの推進」や「各省庁において保有するデータの全体像の把握」、「データの品質管理」といった表現が入ったのはこれが初めてではないかと思います。

データマネジメントを適切に行い、縦割りの行政サービス統合化により国民の利便性向上や行政事務の非効率の排除のために徹底的にデータを活用していかない限り、日本の国力の低下を招くことは火を見るよりも明らかです。
行政データが各府省、各手続き単位でまったくつながっていないことがコロナによって白日の下にさらされ、様々な不都合や無駄な支出が税金で賄われたことを国民が目の当たりにしました。
今回の「デジタル・ガバメント実行計画」がこの惨状を少しでも改善し、今度こそ、データマネジメントに対して政府が本気で取り組む契機となることを切に願っています。

DAMA日本支部 企画担当理事
JDMC事務局長 兼 理事
株式会社リアライズ 代表取締役社長
大西 浩史

デジタルガバナンスとは? ガバナンスについて

デジタルタガバナンスやデジタルガバナンス・コードというワードをよく耳にするようになった。デジタルガバナンスとはどういう定義なのか、デジタルガバナンスの中でデータガバナンスはどのように位置受けられているか気になったので、調べてみた。
本稿では、この結果とガバナンスに関する私見を述べる。

デジタルガバナンス

経済産業省から出された「デジタルガバナンス・コードの策定に向けた検討」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_governance/pdf/report_001.pdf)によると、デジタルガバナンスとは、”デジタルトランスフォーメーションを継続的かつ柔軟に実現することができるよう、経営者自身が、明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で、組織・仕組み・プロセスを確立(必要に応じて抜本的・根本的変革も含め)し、常にその実態を掌握し評価をすること。”と定義している 。
また、具体的には、以下の図のような5つの行動原則からなる。

      出所:経済産業省,デジタルガバナンス・コードの策定に向けた検討

この5つの行動原則に基づいて、経営者自身が明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で組織・仕組み・プロセス等を確立・実行・評価・改善することで、「2025 年の崖」の克服やビジネスの高度化・創出・変革の推進を目指すことを期待している。

データガバナンスに関する記載は、原則2の中の【データ活用のための戦略の策定】の解説 で、「DX はデータ利活用が重要であるため、データの重要性やガバナンス、データ戦略等の内容を取り入れることが望ましい。」とある。

また、原則4の中の【業務の仕組みやITシステム・データの適正化】の解説で、データに関して「クラウドや社内 API 等のデジタル技術の部門横断的な活用に向け、既存の業務の仕組みや IT システム・データの見直し・シンプル化・再構築を行うとともに、IT システム・データ に関するアーキテクチャ等の適正化を行う。」とあった。

DXでは、「データやデジタル技術を活用」がキーワードになっているが、デジタルガバナンスの解説の中では、上記の他には具体的なデータに関する指針は見当たらなかった。

デジタルガバナンス・コード

昨年の11月19日に経済産業省から「デジタルガバナンス・コード」(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html)が出された。デジタルガバナンス・コードとは、企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応を取りまとめたものである。
以下の4つの柱立てについて、(1)基本的事項 ①柱となる考え方②認定基準、 (2)望ましい方向性、 (3)取組例が述べられている。
 1.ビジョン・ビジネスモデル
 2.戦略
  2-1.組織づくり・人材・企業文化に関する方策
  2-2.IT システム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策
 3.成果と重要な成果指標
 4.ガバナンスシステム

企業は、このデジタルガバナンス・コードを遵守していることを投資家や従業員、取引先などといったステークホルダーに対して開示することによって、自社が「DXを進めるための仕組みを持っている」ことをアピールすることができる。
さらに、このコードを守っている企業であることを客観的に評価し、DXを進めるための準備が整った“DX-Ready”企業として認める「DX認定制度」も開始されている。
デジタルガバナンス・コードは、企業のDXの格付けに使われるものと感じた。

ガバナンス

DMBOK第2版のデータガバナンス章で、ガバナンスは「統治」と謳っている。データガバナンスを立法(ボリシー、規定、アーキテクチャの定義)、司法(課題管理と報告)、行政(保護とサービス、行政責任)と三権分立の観点から解説している。

ガバナンスというと「ガバナンスを効かせる」と使われるように規制の概念が強く、データガバナンスもデータの規制と捉えられ、なかなか言葉として浸透しなかったように思う。DMBOKでは、データガバナンスを中心にデータマネジメントの知識領域があり、ガバナンスを規制と捉えていたメンバには、DMBOKのホイール図は受け入れ難かったのではないか。

経済産業省から出されたデジタルガバナンスは、明確な経営理念・ビジョンや基本方針を示し、その下で、組織・仕組み・プロセスを確立し、常にその実態を掌握し評価するという一連の取り組みの統制である。

デジタルガバナンスやデジタルガバナンス・コードが認知されていくことで、ガバナンスの捉え方が変わり、データガバナンスに関しても規制だけではない全体の取り組み、統制であるという意識に変わり、データガバナンスの概念が正しく浸透していくことを願う。

以上

座学でデータマネジメントを学ぶには

データ利活用を推進するために、データマネジメントやデータガバナンスに関心を持つ組織が増えています。それとともに、組織内にデータマネジメントの知見が無いため、まずは一般的な教育を受けるところからはじめたい、という方も増えてきています。
効率的に自社に必要な知識を学び、同時に組織内のデータマネジメントを実践するには、外部の専門家に入ってもらい、プロジェクト化するのが手っ取り早いでしょう。今後組織のデータマネジメントの中核を担うメンバにもプロジェクトに参加してもらい、OJTで手を動かしながら学んでいくやり方です。
ただ組織が必要とする特定のデータマネジメントの専門家を見つけられない場合、独力で座学で学んでいくことも必要です。

座学でデータマネジメントを学ぶ3つのステップ

私はデータマネジメントについてわからないことがあると、次のようなステップで調べ、学んでいます。

その1 DMBOKで基本に立ち返る

なにかわからないことがあれば、まずはDMBOKを開いています。
データマネジメント知識体系ガイド 第二版
https://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/18/270160/

翻訳メンバだったこともあり、英語原本も日本語版ももうすでに何度となく読んでいます。ですが新たに経験した現場の成果物や組織体制を踏まえて読み返すたびに、「この成果物や考え方は別の場面にも適用できるな」などと、新しい気づきが得られます。
データマネジメント未経験者の方も、DMBOKを何度も読み返せば、全般的な知識を学べるはずです。
ただし、DMBOKは日本語版の本文だけでもおよそ650ページあり、また具体的な成果物やルールの記述が少ないため、ひとりで最初から最後まで通して読み切るには、なかなか歯ごたえがあります。
おそらく英語圏でも同じような悩みがあるのでしょう。DMBOKの出版責任者の方が、DMBOKの概説書を英語で出版されています。英語が堪能な方は、まずはこちらを読み込み、より深く学ぶときにDMBOK本体にあたられるといいかもしれません。
Navigating the Labyrinth: An Executive Guide to Data Management
https://technicspub.com/dmbok/

その2 WEB教育プラットフォームで最新情報を押さえる

現在のDMBOK第2版の英語原本が出版されてから、すでに3年が経過しています。データマネジメントも、新しい技法や考え方が出てきています。
私はこうした情報を、WEBの教育プラットフォームのコースや解説記事を通じて仕入れています。特に、毎年DAMA-Internationalと国際的なデータマネジメントカンファレンスEDW(Enterprise Data World)を開催しているDataversityのサイトは頻繁に巡回しています。
Dataversity
https://www.dataversity.net/

有料のトレーニングコースもありますが、その時々のデータマネジメントやガバナンスのトレンドを押さえるのであれば、Webinarをチェックすれば十分でしょう。(https://www.dataversity.net/category/education/webinars/upcoming-webinars/
ここでWebinarを開催しているDMBOKの著者もいます。彼らのWebinarではDMBOKには載せていなかった事例や成果物イメージを確認できることもあるので、おすすめです。

その3 SNSで疑問を直接専門家にぶつける

書籍やWebinarの疑問は、著者または講演者本人にSNSを通じて質問します。海外、特にアメリカの著名なデータマネジメント専門家の多くが、LinkedinかTwitterのアカウントを持っていて、直接コンタクトを取ることができます。
またLinkedinではグループ機能で専門家を中心にディスカッションが行われているので、参加してみるとおもしろいでしょう。

日本語で学ぶならまずはDAMA日本支部へ

上記以外に日常的に参照している書籍やサイトもありますが、だいたいなにか知りたいことがあると、この3ステップのどこかで解消されます。
また書籍代以外は基本無料なので、金銭コストを避けたい学生や若手の方にもおすすめです。ご参考ください。
ただ、その2もその3もそれなりの英語力が必要になります。
やはり語学のハードルは高い、日本語で幅広く学びたい、という方はDAMA日本支部にご参加ください。
テーマ別の分科会だけでなく、最近では2~3ヵ月に一度DMBOKの概説セミナも実施しています。また国内の専門家が所属しているので、分科会/セミナの場で直接質問をぶつけてみてはいかがでしょうか?

マネジメントへの挑戦

データ管理は何のためにやるのでしょうか?
企業であれば,競争に打ち勝つため,極論をいうと生き抜くためのマネジメントの一環だと私は思っています。

であれば,データに携わる我々はもっと経営について関心をもつべきかと思います。ということで,今年のお正月は、復刻版の「マネジメントへの挑戦(一倉定)」を読んでみました。私にとっては遠縁かつ高校(旧制中学)の先輩にあたる方ですが,これまで著作は読んだことはなく,名前のみ知っていました。

基本的に読みやすい本なのですが,目から鱗の個所が多々あり,今年はいいスタートが切れた感じです。その中で,いくつか内容を紹介したいと思います。

① バランスのとれた組織ではダメ
「すぐれた会社,成長する企業は,組織面だけでなく,いろいろな面でつねにバランスをやぶって前進している。アンバランスが成長途次の姿なのである。」

組織のアンバランスさを大事にする,組織がどんどん変化する。こうしたことに情報システムはポジティブに反応できていないのではないか。組織変更するとシステム改修が発生して大変とか,時間がかかるとかはよく聞く話ですよね。要件定義の要素として可変性分析がありますが,組織については可変であるという前提で,データモデリングしておきたいところです。

② 二つの原価計算
全部原価計算と直接原価計算
すごく乱暴な言い方をすると,全部原価計算とは,間接費も案分・配賦して製品ごとの原価を算出する財務会計としての原価,直接原価計算は直接費と間接費に分けて管理する管理会計としての原価

本書では,どの製品を捨て,どの製品を伸ばしていくかは直接原価計算でなければ判定できないということを主張しているわけです。詳細は省きますが,全部原価計算の場合,配賦ということが経営判断を誤らせる元凶ではないかと思います。

企業が大きく,複雑になってくると,この配賦コストの仕組みも複雑になり,これを取り去った直接費を取り出して分析することが困難になってきます。これは,情報システムが全てのデータを最小粒度で保持していれば,直接費と間接費を分離できるかもしれませんが,事業部門,子会社,関連会社を通して原価を正しく分析しようとしても,データフローの途中でデータが合算され分離できなくなっているケースが多々あります。トランザクションデータを加工前の状態で保持していれば,集計軸を変えれば良いだけですが,合算されてしまうとどうにもなりません。

他にも企業レベルで情報システムとそのデータモデルを考えるうえで,多くの示唆を得られる個所が多々あります。機会あれば,他の個所もデータ管理やデータモデルと絡めて紹介したいと思います。

標準化における、計画時や標準文書作成時、適用・運用時のポイント・コツ

前回までの私のブログ「標準の作成と定着化について」、「標準化の進め方について」に続き、標準化に関する最後のブログになります。

今回は、標準化における、計画時や標準文書作成時、適用・運用時のポイント・コツを記載します。

大きく以下の3つの分類毎に記載することにしました。

①計画段階
②作成段階
③適用・運用段階

標準化の進め方との関係は以下です。青色部分が、標準化のステップです。
今回記載するポイント・コツは、オレンジ色部分になります。

①計画段階の【5つ】のポイント・コツ

ここは、 これまでのブログ「標準の作成と定着化について」の最後に記載した、 「今後、標準化・標準文書作成を検討するにあたって・・・。」部分も参考にして頂けたらと思います。
また、プロジェクトと同様、きちんと計画書を作成し、関係者と合意した上で進める必要があります。

  • ポイント・コツの1】
    標準化もプロジェクトと同様、目的、範囲等を明文化し、標準化の計画書を作成、計画書を基に関係者と合意した上で進める。
  • ポイント・コツ その2】
    標準文書は、会社、組織で遵守しなければいけないものと、参考文書の位置付けのものとで、内容や用途が変わってくるため、計画時に標準文書の取り扱い方針を明確にする。
  • ポイント・コツ その3】
    誰のための標準文書であるかが重要。最初に方針を決めて、関係者に周知、合意してから進める。
  • ポイント・コツの4】
    ビジネス、業務において、どこの、どの部分の位置付けかを常に意識、明確化し、計画書にも記載し、実施する。
  • ポイント・コツ その5】
    いつの間にか勝手に作ったと思われ抵抗感をもたれることのないよう、現場を巻き込み、本取組みに参加してもらうよう現場を巻き込んだ体制を検討、計画をする。
    これにより、現場からの参加者が標準文書の伝道師となってくれる効果も見込めます。

②作成段階の【5つ】のポイント・コツ

  • ポイント・コツ その1】
    標準文書のはじめに、標準文書策定の責任者(もしくは経営層)のメッセージを記述し、会社全体の取り組みであることをアピールする。
  • ポイント・コツ その2】
    プロセスとインプット/アウトプットが明確で、そのフェーズ・タスクで何をやらなければいけないか、どの役割の人がやるか、どういった承認行為があるかが分かるものにする。
  • ポイント・コツ その3】
    標準文書は、知識や経験の少ない人のレベルに合わせて作成するが、それでも細かい技法や手法まで行き過ぎず、書き過ぎない。
  • ポイント・コツ その4】
    標準文書はページ数が膨大になると読まれなくなるため、適切な量とする。
  • ポイント・コツ その5】
    作成する標準文書は、要約版(説明会、上層部用)と詳細版(現場用)に分けると活用しやすい。

③適用・運用段階の【5つ】のポイント・コツ

  • ポイント・コツ その1】
    本格適用アナウンスや現場への説明会に経営層が参加し、会社全体の取り組みであることをアピールする。
  • ポイント・コツ その2】
    本格適用アナウンスや現場への説明会では、「どのようなものか」「何をするか」「どのようにするか」といった標準文書の説明だけでなく、「なぜ必要か」「どのようなメリットがあるか」といった動機付けをするための説明を欠かさないようにする。
  • ポイント・コツ その3】
    定着化するために、教育、啓蒙活動、定着状況の把握をする。
    会社の研修カリキュラムに標準文書の教育を組み込むと、認知・啓蒙につながり、転入者も勉強できる。
  • ポイント・コツ その4】
    標準文書の改善要望の反映や、組織・外部環境(法令等)の変化への対応ができずに実態と乖離して使われなくなるのを防ぐため、標準文書の管理者を明確にし、定期的にブラッシュアップする。
  • ポイント・コツ その5】
    標準文書はいつでも活用・閲覧できるように会社のポータルサイトに掲載し、バージョンアップ情報もタイムリーに分かるようにする。

今回で標準化は最後です。

以上、3回にわたり記載させて頂きました「標準化」に関する内容は、今回で終わりになります。これはデータマネジメントの標準に限らず、他の標準文書にも共通的に言えることと思います。 標準化を検討・実施する際の参考にして頂ければ幸いです。

蛇足になりすが、標準文書の構成要素をメタモデルとしてER図に表すことも過去実施したことがあります。標準文書に記載すべき構成要素について、議論・明確にするといった観点・方法としても面白く、有意義な取組みでした。

以上

ITベンダーとの関係を考える

 データマネジメントを始めるのに、「データモデリングから始めませんか?」というお話をし、その次に「データモデラーのお噺」と続けました。

 では、 データモデラーが居れば、或いは獲得すれば、すぐにデータマネジメントが始められるのでしょうか?その前にもう少しやっておきたいことがあります。
 データマネジメント自体が、業務部門の人とIT部門の人が一緒になって行う企業活動であることはDMBOKに記載されています。

 ここでは、データマネジメントに始まり、情報システムの開発(もちろん再構築を含みます)に至る話を書いていきます。

企業とITベンダー(古いスタイル)

  これまで少なくない企業で、情報システム部門、或いは情報システム子会社が次のような形での発注を行い、システムを構築して来ました。ITベンダーも様々ですが、こちらでは主にシステムインテグレータ(SIer)を指しています。

  • 企業内では、業務部門からの要望を情報システム部門が取りまとめ、これらを要求事項としてITベンダーに発注を行っていました。
  • ITベンダーでは、これらから対象となる業務の単位を一つの機能として設計し、機能ごとにプログラムを作成します。
  • この際、主に「業務フロー」が用いられ、ビジネスレベルでのデータモデリングが行われることは稀なようです。
  • ITベンダーから、二次受け、三次受け、など多重請負が様々な問題を起こしてきたことは知られています。
  • 発注した企業側は、完成したシステムの納品を受け、受け入れテストとして、実際の業務が行えるかという視点で検証を行います。この時点で、データがどうなるかという点においては、過去のデータが継続して使えるか以上の関心が持たれることは少なかったようです。
  • 実際には、納品時点で機能が足りない、仕様に齟齬がある、移行したはずのデータに問題が発生するなどの不具合を沢山見てきました。

実際には、このようにIT部門が要望を纏めて発注を行ってくる形態の場合でも、データモデリングを行い、既存システムがあるならデータプロファイリングを行うなど、業務上の情報の構造と実際のデータによる可視化を進めれば問題は相当に小さくなり、いわゆる凝集度が高く結合度が低い、改修が容易なシステム構築を行うことは可能です。しかしながら、その場合でもIT部門だけではなく、業務部門の方の協力が必要です。
 それでも、複数のシステム間の問題を解決するためには、データマネジメントによる全体の調整が必要です。

企業とITベンダー(新しいスタイル)

 企業内でデータマナジメントを実践するには、何らかの形でそれを推進する組織が必要です。

専任かバーチャルかなど、その形は企業により、その段階により様々になると思いますが、業務部門の人、つまり業務のエキスパートの方と、情報システム部門の人からなる組織を形成します。
 ここでデータ要件の定義やアーキテクチャの定義から、データ品質のマネジメントや、データ統合やBIなどを担っていきます。これまでITベンダーに依存してきた多くのことを自社内で担っていくことになります。
 これまでに持っていなかったスキルが必要になる部分や、先ずは組織化を行っていく部分については、外部コンサルからの支援を受けて実現するのが有効です。プログラム開発のパワーが不足する部分は、外部プログラマを利用する形になります。
 既存のシステムの維持なども含めて、もちろん一気にこの形に変更するのは難しいと思います。しかしながら、一部からでもこちらの形に変えていかないと、これまでと状況が変わりません。
 まずは、現在依頼しているITベンダーに対して、このような形に変革していくこと、この外部パワー部分を担えるなら役割を変えていくことを検討してみましょう。現行のITベンダーでは、特に組織化の支援が担えないような場合は、その部分に別途専門のコンサルを導入することが必要となります。
 データの発生源となる部署、データを利用する部署、情報部門システムから人を出して検討を始めるグループを作るような形で始めても良いでしょう。最初は、情報システムが主導する形になることが多いでしょう。或いは利活用の要求が先行する場合なら、その対象の業務部門が中心となって進めた方が良いかも知れません。

 ともかく、実際に活動を始めるにはどうしたら良いのか、自社でできていることは何で、何が必要なのかわからないという方、DAMA日本支部に参加して、いろいろな分科会に参加してみてはいかがでしょうか?