標準の作成と定着化について

今回は、会社や組織にデータマネジメント等を推進、定着化させるための一つの手段として、その専門領域の知識体系(BOK)(データマネジメント知識体系ガイド(DAMA―DMBOK)等)を活用した標準化、定着化の考え方、進め方を記載したいと思います。

世の中にはDMBOK以外に、「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK):PMI」、「ビジネスアナリシス知識体系ガイド(BABOK):IIBA」、「ITアーキテクチャの知識体系(ITABoK):Iasa」、などなど、知識体系ガイド(BOK)が多くあります。

今回は多くの会社で、会社・組織の標準として規定されており、データマネジメントと「マネジメント」部分の名前が同じ、プロジェクトマネジメントの標準化を例として、考え方や、進め方を記載します。

そもそも標準化、もしくは標準文書の作成は必要なのでしょうか・・・。

多くの会社が標準文書は作成したものの、その後、活用されなくなり、形骸化して使われなくなってしまい、また何年か後に、新たに別の標準文書が作成され、また使われなくなり・・・と繰り返される場合があります。

当初は、ビジネスや業務を実施する上で、課題・リスクがあり、その原因を分析・評価した結果、マネジメント(プロジェクト、データマネジメント等)に問題があり、その解決策として、これまで実施していなかった、また属人的に実施していた「マネジメント活動」の実施、もしくは強化を図る事を考えられた事と思います。

そして、その手段の一つとして標準文書を作成し、それを基にビジネス活動を行うことによって、ビジネスを成功に導くことが目的・目標であったはずです。

上記のような理由があれば、標準文書の作成は必要性になりますし、その改善活動等が定着化・浸透してしまえば、ビジネス上の課題・リスクは無くなるため、標準文書を活用しなくてもよい場合もありますが、新しい人が増えた場合に維持していくのは難しいと思います。
また、標準文書を作成しても活用されないのは、標準文書の問題ではなく、定着化、浸透の仕方に問題がある場合が多いです。

よって、標準化、もしくは標準文書の作成は必要です。

  • 新たな取組みをする場合は、その取組みを文書化し、共通認識を図るために標準化、標準文書は必要です。
  • 属人的な活動に問題があり、ビジネスや業務に課題・リスクがあるため、業務を標準的、均一的に行うことによって、業務の品質向上、リスク軽減を図る施策の一つとして必要になります。
  • よって、ビジネスや業務を実施する上での「課題・リスク」を解決する手段の一つとして有効です。

何故、DMBOK、PMBOK等の知識体系があるのに、会社や組織の標準文書を作る必要があるのでしょうか・・・。

例としてPMBOKは、ビジネスの業界・業種を問わず、汎用的な知識体系となっており、ビル建設等のプロジェクトにも、ITのシステム開発プロジェクトにも、研究開発のプロジェクトにも特化しておらず、共通的、汎用的な知識体系となっています。
よって、ビジネスや業務を実施する上で、ある業界、業種、会社・組織に合った標準にする必要があります。

また、会社の課題、リスクを考えると、ある部分を詳しく定義、記載する必要があります。
それと、会社・組織には関係ない、必要ないプロセスやアクティビティもあります。最初は全ての範囲を実施するのではなく、段階的にステップを分けて、スモールスタートで順次拡張していくのであれば、最初から全てBOKと同じ範囲のもの全て作成する必要はありません。

よって、DMBOK、PMBOK等の知識体系があっても、会社や組織の標準文書の作成は必要になります。

会社や組織の標準文書作成時に、DMBOK、PMBOK等の知識体系を活用する理由は・・・。

これはDAMA日本支部会員の方々にはあらためて言う必要はありませんが(笑)、他の方にご説明される場合の参考として下さい。

専門領域の知識体系は、その専門領域の有識者のノウハウを結集していて、体系化されているため、全体を把握、俯瞰できることが重要になります。現在の自社の取り組みの評価をする際にもベンチマーク、リファレンスモデルとして活用できます。DMBOKですと、DAMA-DMBOKフレームワークやアクティビティで体系化されています。PMBOKでは知識エリアやプロセス群で体系化されています。

また各ガイドで使われている用語、定義を活用することにより、様々な人が共通な言葉でコミュニケーションが出来ることになり、それにより、コミュニケーションも早くなり、円滑にでき、そのメリットは大変重要になります。

それと、各BOKは、バージョンアップされる事が多いため、世の中の動向や実績に追従したノウハウを習得できると思います。

但し、これはあくまで私見ではありますが、各知識体系やその業界の標準は、ある程度業界内で定着した後に、体系化され、まとめられている場合もあります。そういった場合は、ある程度古い(語弊がありますが)やり方になっている可能性もあり、現在の早いスピードで動いている世の中では、見直し・拡張が必要な場合もあると考えます。これも、前述の会社や組織の標準文書作成の必要性の一つと思っています。

よって、まだマネジメント等の取り組みがなされていなければ、専門領域の基礎知識として活用し、知識体系がバージョンアップされることで、最新の知識体系も取り入れることができます。また、実際に実施されている業務の取組みの方が進んでいれば、そこは前述の会社や組織の標準の中で拡張すればいいと思います。

今後、標準化・標準文書作成を検討するにあたって・・・。

  • 標準化・標準文書の作成は、ビジネス・業務の課題・リスクを十分整理した上で、その目的・目標を明確にして検討・作成が必要になります。
  • 標準文書が活用されなくなるのは、標準化や標準文書を作成する事がよくないのではなく、その目的・目標がはっきりしていないから。目的・目標に合った、範囲や内容の標準化、文書とする必要があります。
  • BOK等の専門領域の知識体系は、全体網羅でき、体系化され、また共通の言葉・用語で会話できるため有用です。
  • 標準化、標準文書作成だけで終わるのではなく、定着化や浸透の施策が必要であり、重要です。作成した後の取り組みが不可欠になります。

以上