経営情報の見える化とデータマネジメントプロセス改善

「データドリブン経営」という言葉が定着しつつある。これは、経験や勘に頼る従来型の経営判断を改め、データに基づいて意思決定を行おうとする経営手法だ。これを合言葉に、多くの企業で経営情報を見える化の取組みに着手しはじめた。

経営者はより上流業務の情報を細かく見たい

経営情報として真っ先に思いつくのは売上や収支といった会計情報だ。これらは会計システムから容易に手に入る。会計情報は現在の経営環境の変化を大まかに把握できる。ただし、なぜ変化したのか?今後どうなりそうか?といった洞察までは読み取ることはできない。そこで経営者は、より上流業務のデータを収集し、現場サイドで起こっている最新状況を把握し、自分の経営判断に役立てようと考える。

例えば営業情報について。業績に大きな影響を及ぼす主要顧客の引き合いや受注状況を収集し、商品毎の今後の売れ行きを見極めようとする。または購買情報について。自社製品の生命線となる基幹部品の動きを、サプライヤ別の購買単価や不良品率の推移から把握する。

このように経営者は、会計情報を皮切りにより上流業務に遡り、さまざまな情報を細かく見たいと考えている。

経営情報を提供する際に生じる
データマネジメント上の問題

こういった経営者のニーズに対応するためには、データマネジメント上さまざまな問題を乗り越えなければならない。

コード変換の問題

先に述べた引き合いや受注状況について。経営者はこれら情報を会計の売上情報と組み合わせて見たい。だがここでコードの問題が立ちはだかる。営業と会計の顧客コードは異なる場合が多い。よって両者を組み合わせるにはコード変換しなければならない。コード変換にはトラブルがつきものだ。両者の登録粒度が微妙に異なるため登録ミスが生じやすい。新規顧客に対しては変換表のメンテナンス漏れもよく発生する。

データの計上方法が不適切

業務上のデータ計上ルールが曖昧だったり、ルールの適用が不徹底だったりする場合がある。例えば基幹部品の購買情報を例に。しばしば購買部門では、本当は複数の購買品目があるのに、1件の購買として一括計上する商習慣があるかもしれない。これでは購買単価はおろか、基幹部品が買われたかどうかも分からない。

データが入力されていない

そもそもデータ自体が入力されていないケースも考えられる。例えば、サプライヤ別品目別に不良品率を見てサプライヤの選別に役立てたい。ただ、ある事業所では不良品の数量をシステム登録するルールそのものが存在していないことだってあるかもしれない。

業務部門を巻き込んだデータマネジメント
プロセスの抜本的な見直しを

経営情報の見える化に取り組むと自社のさまざまな問題が見えてくるだろう。特に上で例示した問題を解決するには、業務部門を巻き込みデータマネジメントプロセス自体を改善する必要がある。ただ、これは正直なかなか骨の折れる作業だ。ついこういった面倒くさい調整を後回しにして、データ統合基盤やBIの構築といったIT周りの作業に走りがちな企業が多いのではないか。

だが幸いにも「データドリブン経営」という言葉が定着しつつある。経営情報の見える化の取組みを契機に、自社のデータマネジメントプロセスを抜本的に見直してみてはどうか。データに敏感な経営者であれば必ず後ろ盾になってくれるだろう。