「DAMA日本支部 第9分科会=DMBOK勉強会=の紹介」

DAMA日本支部ではいくつかの分科会活動を行っている。そのうち筆者が担当しているのが第9分科会である。今回はこの場をお借りして簡単に第9分科会の紹介をさせていただきたい。既に当分科会に参加いただいている方やDAMA日本支部の総会に参加いただいた方には既知の情報ばかりになってしまうことをご容赦願いたい。

第9分科会はDMBOKの勉強会

DAMA日本支部のホームページでは「DMBOKに関する研究会」とも紹介されているが、簡単に言えば単なる勉強会である。概ね以下の方針で運営している。
・開催頻度・時間: 3か月に2回程度、各回は概ね90分
・開催場所:    都内+リモート接続 但し今年度からはリモート接続のみ
・内容:      毎回DMBOKの1章分を代表者が説明しディスカッション
・説明担当者:   分科会参加者のボランティア
DMBOK2は全17章あるので、全章の勉強を完了するのには2年以上を要する。

第9分科会は広く浅く 説明担当はボランティア

他の分科会が一つのテーマを掘り下げているのに対して、当分科会はその全く反対であり、DMBOK全体を広く浅く理解しようというアプローチである。
説明担当者もその道の専門家を招くわけでもなく、分科会参加メンバーが自分の得意分野もしくは自分の興味のある分野を自ら勉強して担当する。説明担当者は完全なるボランティアであり、自分で説明資料も作成するので、それなりの負担にはなる。説明担当者にはならずに、ディスカッションに加わるだけの参加方法も可能としている。だが、説明担当になることで、その章に関する理解がより深まるというメリットもあり、多くの参加者が説明担当に挑戦している。

既に2周りして3周目!

 1周目 DMBOK 第1版 2015.10~2017.07
 2周目 DMBOK 第2版 2017.12~2020.04

実はこの分科会の歴史は短くない。2015年の10月にDMBOK第1版の勉強会が始まり、2017年5月には第1版全章の勉強会が完了した。その後第2版の英語版が発売され、2017年12月からは第2版の勉強会として再開、本年4月に全17章の勉強会を完了したところである。この途中には第2版の日本語版も発売されている。これでこの分科会の活動は一旦終了したが、その後も継続の要望が強くその継続方法に関しては大きく以下の3つの意見に分かれた
 1) データ管理って何?というレベルの、より入門クラスの分科会にする
 2) 2周目の内容をもう1周する
 3) 各章をより深堀したディスカッションが行える分科会にする
検討を重ねた結果、2周目の途中から参加したメンバーも多く、また復習もしたいという意見もあったため「2) 2周目の内容をもう1周する」に決定した。2020年7月に3周目のキックオフを行い、今月2020年9月から各章の勉強会を再開する。

今がチャンス!?

これからDMBOKを勉強したいという方、今まさに3周目が始まろうとしているので、今がチャンスと言える。リモート接続のみの開催となったので、ある意味参加しやすいのではないかと思われる。これを機にDAMA日本支部の会員になり、第9分科会に参加してみては?

新分科会について

新分科会として「 データ管理って何?というレベルの、より入門クラスの分科会 」と「各章をより深堀したディスカッションが行える分科会」の要望がなくなったわけではない。会員の方で我こそはと思う方は、分科会リーダーとなり、新たな分科会を開始してみるのも良いと思われる。

== おことわり ==
第9分科会の資料だけいただけないか?という問い合わせをいただくことがありますが、説明資料は著作物の引用が多い関係で配布できませんのでご了承ください。

BIのマスターはメンテされない!

マスター登録を業務(例えば受注ー出荷ー請求ー入金)のためのマスターと分析のためのマスターに分けて考えてみる。

前者に必要なマスター(製造業では商品、取引先、出荷先、請求先等)の登録を間違えると、誤った商品を誤った場所に出荷し誤った請求先に誤った請求額で請求することになり、修正の遡りで多大な対応が必要となる。誤りが繰り返されれば取引先の信用を失うことにもつながり、誤ったマスターはすぐに修正されるべくフィードバックがかかる。

後者に必要なマスターは分析の観点から新たに付加される商品や取引先などの分類とその属性や、様々な組織で生成されるデータを統合するためのマッピングマスター等がある。しばしば分析のプロジェクトは熱く燃え上がり(この軸でも管理したい!より細かく管理したい!)苦労してマスターを登録し素晴らしいアウトプットを見てうれしくなるが、それは往々にしてその時の担当者の視点に留まっていて、時が経ち担当者が変わり後任のマスター登録が回らなくなりアウトプット実績が他の基準となる資料と合わなくなっていく。

担当者の上司も変わる頃には、実績がおかしいことが話題になり、ベンダーの甘い誘惑に負けて最新のツールは何でも安く・早く・上手くできるように思え、また新たな管理視点を入れた最新のBI導入プロジェクトが立ち上がって行く。

なんてこと、皆さんの周りで起こっていませんか?

分析のためのマスターはメンテされない。どうすれば良いのか?決定打はなさそうだが、いくつかポイントを挙げてみる。

1.マスター登録の業務設計が成されていない。不十分。

誰が、どういうトリガーで、何のマスターを登録するのか、この業務設計がキチンとできているか?突っ走る分析担当者にこの重要性を認識してもらうのが中々大変。

2.管理の目的が組織全体で共有されているか?

管理するデータが生成されるタイミングで同時に分析のための分類が登録されないと後から付与するのは初回はともかくメンテが大変。そのためには管理の目的が組織全体で共有されていることが大事。

3.利用されるコードセット(リファレンスデータ)の標準コード

利用されるコードセットの標準コードが定義され運用されているとマッピングの回数を減らすことができる。標準コード類は後から導入できない。先に合意しておいてデータ生成組織が運用する現地コードの属性として追加していくとか、システム更新の機会をとらえて導入するとかが必要。

結局、できる限り管理対象のデータが生成される上流で管理のためのマスターが登録されないとだめかなぁ・・・。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)とデータ・マネジメント(DM)①

デジタル・トランスフォメーション(DX)とは、デジタル(データ)とトランスフォメーション(変革)を組み合わせたものである。当然そこではデータ・マネジメント(DM)の要素がコアとなるはずだが、世の中そのようには理解されていないらしい。

ここではまず、2019年に経産省から発表されたDXレポート、DXガイドラインの内容について吟味してからDXとDMの関係に迫りたい。

DXレポート(2019年9月/57ページ)
~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~

  1.  検討の背景と議論のスコープ
  2.  DXの推進に関する現状と課題
    1.  DXを実行する上での経営戦略における現状と課題
    2.  既存システムの現状と課題
    3.  ユーザ企業における経営層・各部門・人材等の課題
    4.  ユーザ企業とベンダー企業との関係
    5.  情報サービス産業の抱える課題
    6.  DXを推進しない場合の影響 (2025年の崖)
  3. 対応策の検討
    1.  「DX推進システムガイドライン」の策定
    2.  「見える化」指標、診断スキームの構築
    3.  DX実現に向けたITシステム構築におけるコスト・リスク低減のための対応策
    4.  ユーザ企業・ベンダー企業の目指すべき姿と双方の新たな関係
    5.  DX人材の育成・確保
    6.  ITシステム刷新の見通し明確化
  4. 今後の検討の方向性
  5. 終わりに

DX推進ガイドライン(2019年12月/10ページ)

  1.  はじめに
  2.  『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』

 1)DX推進のための経営のあり方、仕組み

          • 経営戦略・ビジョンの提示》
          • 《経営トップのコミットメント
          • 《DX推進のための体制整備》
          • 投資等の意思決定のあり方》
          • 《DXにより実現すべきもの: スピーディーな変化への対応力》

 2)DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築

体制・仕組み

          • 《全社的なITシステムの構築のための体制
          • 《全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
          • 《事業部門のオーナーシップと要件定義能力

実行プロセス

          • IT資産の分析・評価》
          • 《IT資産の仕分けとプランニング》
          • 《刷新後のITシステム:変化への追従力》

まず、DXレポートの2「 DXの推進に関する現状と課題 」は以下の図で概観できる。

DXレポート2.1概観

2-1:DXを活用する経営戦略がない。
2-2:既存システムがDX推進の足かせ
2-3:業務の見直しに対する反対勢力を押しきれない
2-4:ユーザ企業からベンダー企業への丸投げ
2-5:受託事業を中心とした
情報サービス産業ビジネス・モデル
はこのままでよいのか?

最後の2-6として「2025年の壁」が述べられている。
複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合・・・

経済損失は、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある。

一方で、こうも書かれている。

【DXシナリオ】2025年までの間に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムについて、廃棄や塩漬けにするもの等を仕分けしながら、必要なものについて刷新しつつ、DXを実現することにより、2030年実質GDP130兆円超の押上げを実現。

つまりレガシーな既存システムを温存した場合と、DXを実現した場合の差は、-60兆円(12兆円/年 x 5年)vs + GDP 130兆円というわけである(マイナスは主にITサイドであり、プラスはDXから生まれるビジネス価値なので単純に足し算はできない)。

この巨大な市場を誰が無視することができよう。いや皮肉を言う前に明確なことがある。レガシーシステムが今後5年間で仮にゼロになっとしても、その間に30兆円(60兆の半分)は経費が使われるということになる。さらに今後作られていくシステムも、作ったそばから陳腐化する。これはDXレポートでも指摘されている。しかし、ITシステムだけが問題なのだろうか。

次回は、企業の資産とはITシステムなのかDataなのかという点を議論したい。https://dama.data-gene.com/index.php/category/dx/

データ品質管理の具体的な成果物

昨今、データ利活用によって新たな価値を創出することや、コロナ禍で対面での業務が難しくなりアフターコロナ、ウィズコロナのデジタル化された働き方が求められる中で、データ品質=「データが使える状態であること」がますます重要になってきています。

一方で、DMBOKでは、幅広く考え方やアクティビティが記載されているものの、成果物サンプルが少ないため、具体的なイメージが掴みづらい…という声を聞くことがあります。

データモデルなど、手法が確立している(統一されているわけではなくとも)分野はまだ良いとしても、一般的なシステム開発/運用で、あまり馴染みのないデータ品質管理はなかなかイメージがつきづらい分野の一つです。

DAMA日本支部:第8分科会(データ品質に関する研究会)では、実際に手を動かす一助となることを目指して、DMBOKに沿って進めるならどういう成果物を作って行けばよいのか議論しており、2019年に、DMBOK1に基づいた成果物として、データ品質管理を進めるためのワークシートを完成しました。
※下記のリンク先で公開しているので、ご興味のある方は是非ダウンロードいただければと思います。

http://www.dama-japan.org/PublishedMaterials.html

ワークシートの内容についてはDAMA日本支部の会員には総会などでも報告・共有していますが、公開資料としてももう少し解説があるとよいかなと考えており、この場を借りて、少しワークシートの概要を紹介したいと思います。

DQワークシートの概要

ワークシートは4つのシートで構成されています。DMBOK1アクティビティとワークシートの対応関係は下図の通りです。

図:DMBOK1アクティビティとワークシートの対応関係

DMBOK1アクティビティを踏まえて、各シートで記載すべき項目を定義しています。各シートに項目説明がありますのでそちらを参照ください。各シートの概要は下記の通りです。

①ビジネスニーズ整理ワークシート
ビジネスニーズを5W1Hの観点で纏める。ここでは、対象となるデータセットの特定には踏み込まずビジネス視点で必要な情報とその情報に求められる品質要件を纏める。

②DQ管理対象検討ワークシート
具体的に対象データセットを決めて、実データを見た上で、データ品質管理対象を絞り込む。

③DQチェック精緻化ワークシート
データ品質のチェック方法を精緻化して、チェック結果が意図したものになるかビジネス部門とIT部門で確認・合意する。

④検査・レポート運用整備ワークシート
モニタリングとアラート検知時の運用方法を決める。

今後のブラッシュアップ

現在のワークシートVer.1.0はDMBOK1に沿ったものなので、今後は、DMBOK2に沿って、ワークシートをブラッシュアップしていこうとしています。

また、ワークシートを使ってみて、良かった点、改善点などありましたら、フィードバックいただけると嬉しいです。今後に活かしていきたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。