第13分科会(DX分科会)の活動概要のご紹介

  • 第13分科会(DX分科会)の活動概要

本分科会では真のDXに向かうための道程をデータマネジメントと絡めて示すことができないかを検討テーマとして活動しております。

初年度(2021年度)の活動においては、そもそもDXの言葉自体が曖昧ではないかという課題感を起点に、デジタル軸(D軸)とトランスフォーメーション軸(X軸)の二軸に分類して、4象限として表現することに取り組みました。

分科会参加メンバーと意見交換するなかでDXとはビジネス上の変革(トランスフォーメーション)が行われているかどうかを基準としてはどうか。また、現代の変革においてはデジタルデータに対してAIを活用していることが必要要件になるのではないか。という話も行われ、図1のような4象限の図を初期成果物としてまとめ上げております。

図1

   

また、活動2年目の2022年度においては、この4象限における自社の立ち位置を客観的に評価するためのアセスメント表の作成に取り組んでおります。

アセスメントに答えることで、自社の状況やポジションについて関係者で共通認識を図り、真のDX(4象限の右上)に向けて進捗しているのか。逆に、停滞や後退していないかをセルフチェックできるようにすることを目的としています。

そして、そのアセスメントに用いる設問項目に関しては、DAMA日本支部らしく、DMBOK2の各章からの導出を試みています。

  • データマネジメントと組織の変革

こうしたアセスメント表の作成に向けたワークを分科会メンバーで進めていく中で、X軸(変革)に関する設問は当初「第17章 データマネジメントと組織の変革」のみから導出する想定で考えていたのですが、DMBOK2の各章を読み込むなかで、第17章以外にも組織や変革に関する記載が多く含まれていることに気付きました。

例えば以下のように非常に多くの章(節)で組織、文化、変革に触れられています。

第3章 データガバナンス

 4.1 組織と文化

第4章 データアーキテクチャ

 5.2 組織と文化の変革

第6章 データストレージとオペレーション

 5.2 組織と文化変革

第7章 データセキュリティ

 5.2 組織と文化の変革

第8章 データ統合と相互運用性

 5.2 組織と文化の変革

第9章 ドキュメントとコンテンツ管理

 5.2 組織と文化の変革

第10章 参照データとマスターデータ

 5組織と文化の変革

第11章 データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス

 5.4 組織と文化の変革

第12章 メタデータ管理

 5.2 組織と文化の変革

第13章 データ品質

 5.2 組織と文化の変革

第14章 ビッグデータとデータサイエンス

 5.4 組織と文化の変革

第15章 データマネジメント成熟度アセスメント

 5.2 組織と文化の変革

このようにDMBOK2の多くの章で「組織と文化の変革」に触れられている大きな理由の一つとしては、データマネジメントに求められる多くの活動が従来の業務プロセスや組織の延長線上には組み込まれておらず、企業に変革を伴う新たな業務プロセスや組織の設計を求めているからではないかとも想像します。

  • DXとDMの関係性を議論したい方はぜひ第13分科会へ!

変革の取り組みは非常に長い旅になるとも言われています。だからこそ、その活動を継続的に進めていくためにも、途中途中で小さな成功を祝うことの重要性が謳われています。

本分科会は参加者各自でワークすることを重要視して活動していますが、アセスメント表の作成は試行錯誤をしながら時間をかけて進めております。だからこそ、途中小さな成功を祝うことを忘れずに、そして、真のDXに向かってDMBOK2から知見を得るという最終ゴールも定期的に振り返りながら進めていきたいと思います。

本分科会への活動にご興味、ご関心を持って頂いた方、お気軽にご参加をご検討ください。お待ちしております。

以上

データマネジメント・フレームワークは役立つのか?

今回はデータマネジメントフレームワークについて考えてみたいと思います。初めにDMBOK2のフレームワークを簡単に紹介し、次に新たなフレームワークを検討してみたいと思います。

DMBOK2のデータマネジメント・フレームワーク

DMBOK2の第一章には、いくつかのデータマネジメント・フレークワークが紹介されています。その代表格は右図の「DAMAホイール図」でしょう。
このフレームワークは11個の知識領域をハイレベルで表現しているものですが「異なる知識領域間の関係を記述してない」 という指摘もありました。

その問題に対処し再構築されたものが、左図の「DAMAホイールの発展形」になります 。
この発展形が生まれる経緯や、その他のフレームワークに関してはDMBOK2の第一章に書かれていますので参照してください。

フレームワークで表現できないか?

このいずれのフレームワークも素晴らしいもので、全く否定をするつもりはありませんが、筆者が初めてDMBOKに触れた際に、以下のような感想を持ったものでした。

  • DWHやBIは、データマネジメントというより、マネージされたデータを使う側ではないか?
  • データ・セキュリティとは言うが、セキュリティはデータだけではなく、もっと広い視点が必要ではないか?
  • データマネジメントそのものであるもの、インフラよりのもの、業務よりのものも含まれており、DMBOKはちょっとそのカバー範囲を欲張りすぎているのではないか?

そこで、各データマネジメント領域における以下のような要件をフレームワークで表現できないか、自分なりに(半分お遊びで)考えてみました。

  • データマネジメント組織が直接関わるべき領域と、他組織が中心となる領域を区別する
  • 業務的要素とインフラ的要素(IT的要素)を区別する

新データマネジメント・フレームワーク検討

初めに、業務組織、IT組織、データマネジメント組織と、大きく3つの組織があると仮定した上でベースを考えてみました。
右図の「各組織のカバー範囲」に示すように、データマネジメント組織がカバーすべき範囲は、業務よりのものからITよりのものまであると考えられます。

次にデータマネジメントに関連する構成要素を洗い出してみました。これはDMBOKの知識領域も参考にしています。
ここに挙げたもので必要十分ではないかもしれませんが、まずはこれをベースとしてみます。

そして、このこれらの構成要素を、 「各組織のカバー範囲」 の図にあてはめていきます。例えば以下のように

  • セキュリティは、データマネジメントというより、業務とITにまたがった全体に関わるものなので、一番左に…
  • データガバナンスはもちろん一番右に、リファレンスデータは業務よりの話なので上の方に…

これが新データマネジメント・フレームワーク!?

そうして考え出したのが以下のフレームワークとなります。

各構成要素をこのような配置にしたのは、深く考えたものもあれば、やや適当に配置したものもあります。今回は説明は省略させていただきます。

各構成要素の色は、右図のような意味を表しています。上図と右図を一枚にまとめて表現することもできますが、煩雑になりそうなので、今回は一旦見送りました。

DMBOKには「フレームワークは新たな視点を提供する」という主旨のことが書かれていますが、いかがでしょうか?
このフレームワーク自体は大したものではありませんが、今回自分でフレームワークを考えてみて、その意味がわかったような気もしました。

皆さんも色んな視点でフレームワークを検討し直してみるのも良いかもしれませんね。

DMBOK第二版 読み方のポイント

DMBOKの厚さをどう攻略して読むか

DMBOK第二版日本語版が出版されてから、4年以上が経過しました。
この間、DXに伴うデータ利活用ニーズの高まりと共に増刷を続けています。
SNSなどの反応を見ていると、当初の読者層はコンサルタントやSIer企業の方が多かったものの、最近ではユーザ企業の方からも多くの反響をいただいています。翻訳に関わったものとしてうれしく思っています。

ただ、はじめてデータマネジメントを学ぼうという方からは、
「650ページを超える書籍を全て読みきるのは大変。効率良い読み方はありませんか?」
と相談されることも増えてきました。
相談される方から伺ってみると、「効率良い読み方」として期待されているのは、
・すでにデータマネジメントに関わる課題を抱えている方が、解決策を早く知る方法
・データマネジメント全体を知識として学びたい方が、より深く理解しやすい方法
の大きく2つに分かれるようです。

前者については、本ブログ以外にも参考となる記事が他サイトにあります。

『DMBoK2の歩き方とデータガバナンスの位置付けを考える』
https://dama.data-gene.com/tag/dm-walking-map/

『全672ページの超大作、データマネジメント知識体系ガイド「DMBOK2」の攻略法』
https://japan-dmc.org/?p=19468

『日本語版DMBOK2を読む』 https://metafind.jp/2018/12/10/reading_dmbok2_in_japanese/

以下では、後者の視点について掘り下げて、いわばDMBOKを知識教養として学ぶための読み方のポイントをご紹介します。

章をまたいで用語や概念が解説されていてわかりづらい

DMBOKの、たとえば参照データとマスターデータのような特定の章について読んでいると、メタデータやデータ品質、データガバナンス等の他の章に関わる説明が出てきます。
DMBOKをデータマネジメントの「教科書」として読みたい方は、まずここで立ち止まってしまうようです。歴史の教科書であれば、まず古代から中世、近代と章毎に理解でき、先行章の理解が後続章の理解をより深めてくれますね。
しかしDMBOKはそのような作りではありません。(仮に歴史の教科書をDMBOK式に書き変えるならば、「歴史とは」という章ではじまり、「哲学宗教」「政治統治の方法」「共同体の形態」といった章構成になりそうです。)

DMBOKは主要11章を「知識領域」と呼んでいます。この領域というものはデータマネジメントに関する知識を①データの種類②性質③管理手段の違い※でまとめた単位です。(※たとえばそれぞれ代表的な章として①参照データとマスターデータ、②データ品質、③データモデリングとデザインが挙げられます。)
データ品質と一言で言っても、メタデータやマスターデータの品質もあればそのどちらにも該当しない品質もあります。これらはみな、DMBOKでは別々の章に書かれています。そのため、「DMBOKでデータ品質に関わる知識を深めたい」という方は、いずれは650ページすべてを読まなくてはと考えがちです。
とは言え、650ページ全て読み込むのはハードルが高いというのが今回の主旨でした。

最初は章単位ではなく”節”単位で読み込むのがオススメ

DMBOK第二版の第3章から第15章までの各章は、どの章もほぼ以下の構成です。

第1節 イントロダクション
  1.1. ビジネス上の意義
  1.2. ゴールと原則
  1.3. 本質的な概念
第2節 アクティビティ
第3節以降 ツール、技法、導入ガイドライン、ガバナンス、文献 等

第3章 データガバナンスの目次
第3章 データガバナンスの目次

第1節は、その知識領域の基本的な用語と考え方を紹介しています。
第2節は、その領域で一般的に実施される活動と手順が解説されます。
第3節以降は、DMBOK第二版英語原本が書かれた2015年時点で、その領域について広く普及していたツールや技法、ガバナンス方法が書かれています。
英語原本が書かれてからすでに7年が経過しているため、現在からすると第3節以降の内容に古さを感じるものもあります。
一方で、第1&2節の内容は、具体的なツールや方法論ではなくコンセプトを書いているため、これからも参考になります。

全くはじめてデータマネジメントに触れるという方は、まずは第3~15章の用語の解説を読み通すと良いでしょう。そうすれば、各章に分かれて記述されている知識が、頭の中で紐づくはずです。
ひととおり用語についての知識が身についた方は、次に、章を横断して第2節を読むことをおすすめします。第3節以降の知識を前提には書かれていないので、第2節を繰り返し読むだけでも具体的な活動内容について理解できるはずです。

ちなみに、第1/2/16/17章は、知識領域横断で考慮するべき内容が記述されています。

  • 第1章:第3~13章全体を通した、データマネジメント全体の目的と原則
  • 第2章:データを取り扱う際のリテラシー
  • 第16&17章:データマネジメントを成功させるための組織文化

これらは他の章に比べてより抽象的な記述が多いので、最後にまとめて読むと良いのではないでしょうか。

まとめ

DMBOKを購入したものの、その厚さと難解さに心が折れて「積読(つんどく)」していませんか?
また、DMBOK以外の、ほどほどの厚みで読みやすい本でデータマネジメントを学んだものの、物足りなさを感じていらっしゃいませんか?

そうした方はぜひ、章を横断して第1節の基本的な用語の解説を読んでみてください。第1節だけ読み返すなら、それほどボリュームはありません。
もう少し踏み込んで、どんな活動をするのか学びたい方は、第2節を読み進めてください。

そして次のステップとして、DMBOKの基礎用語や活動の解説を参考に、みなさんの所属する組織やお客様に対して、DMBOKをベースにデータマネジメントを実践してはいかがでしょうか。

データに騙されない!?

はじめに

既に1年以上前となりますが、私はDMBOK2 第2章「データ倫理」に関して、このブログに投稿したことがあります。そこで「データで騙した例、騙された例など機会があれば紹介したい」という主旨のことを最後に書きました。今回はその例をいくつか紹介してみたいと思います。

母数に注意

現在の新型コロナの感染者数は若年層が多いと言われていますが、第一波のころには「どの年代でも平均的に感染している」という報道がありました。その頃に提供されたデータが以下となります(リンク先を参考にグラフは独自に作成)。

確かにどの年代でも平均しているように見えますが、もともと東京都は20代の人口が少ないはずです。そこで10万人あたりの感染者数にしてみると以下のようになります(独自に集計)。

こう見ると、明らかに若年層の方が感染者数が多いように見えます。なので「どの年代も平均して~」という報道には疑問も感じます。
実は「10万人あたり~」を棒グラフにしたのは、円グラフよりも差が際立つからであり、このようにグラフを使い分けることもデータを扱う上でのテクニックであり、”騙すこと”ともいえます。

コロナの感染者数はあくまでも例であり、例えば国ごとのオリンピックでのメダル数ランキングも「人口当たり」にすると、かなり違う見え方になるでしょう。また、出身都道府県別総理大臣数は山口県が東京都の次に多いらしいですが、人口あたりにすると山口県が圧倒的に多くなります。

このように、母数を意識した観点も忘れてはならないでしょう。

単位に注意

Cloud時代になりメインフレームの需要は減退していると言われています。IT系の記事でこれを証明するべく「メインフレームの出荷台数推移」なるもが紹介され、出荷台数が激減しているということが示されています。
しかし、メインフレームは1台の処理能力は飛躍的に向上しており、20台以上のメインフレームを1台に集約するような事例もあります。単純に出荷台数で評価することが正しいかは疑問があります。
例えば、あるベンダーでは「メインフレームの出荷処理性能」が10年間で3倍以上になっていることを公表しています。これは、価格性能比も3倍以上になっているでしょうから、素直に、メインフレームがまだ成長している、という評価はできないでしょう。
「出荷台数」「出荷処理能力」「出荷額」など単位が異なると評価が変わります。
この例にかかわらず、データを扱う際にその単位にも気を付けた方が良いでしょう。「xx茶は2lボトルより、500mlの方が売れている」というような場合も、それが、本数比較なのか、価格比較なのか、容量比較なのか、ハッキリしないと評価が難しいですね。

その他の例

その他にもたくさん例があるのですが、長くなるので、箇条書きで紹介します。

◇ 母集団特性に注意・・「部門別TOEIC点数ランキング」で「国際部が1位」
→国際部ですから、当然の結果で意味のない評価とも言えます。

◇ 不要な過去情報・・「これまでxxx円を投資したので、今更このプロジェクトはやめられない」「せっかく30分待ったから、もうちょっとタクシーを待ってみよう」→いずれも過去情報は今後の判断に影響しないはずです。

◇ 不要な追加情報・・最高気温の統計分析に「湿度情報」→ 正確な分析に影響?
◇ 無意味な平均・・「平均貯蓄額」→ 一部の資産家の影響大
◇ 言葉の定義・・「国別暴力事件の発生件数」・・暴力事件の定義が国により異なる


この話題、いくらでもお話できそうですが、今回はここまでにさせていただきます。興味のある方は是非DMBOK2 第2章を読んでください。

「DMBOK2概説セミナー」の紹介

はじめに

DAMA日本支部では年に3回程度「DMBOK2概説セミナー」を開催しています。今回は宣伝も兼ねてそのセミナーの全体像を紹介させていただきます。

開催のきっかけ

DMBOK (Data Management Body Of Knowledge)の第2版(以下、DMBOK2) は2017年に英語版が2018年12月に日本語が発売となりました。日本語版の翻訳作業はMetafind社とともに DAMA日本支部も担当しています。
そこでDAMA日本支部としては、このDMBOK2を普及させ、これをきっかけにDAMA日本支部の会員増加にもつなげたいとの思いがありました。その施策のひとつが「DMBOK2概説セミナーの開催」となり、2019年3月から開始しています。

開催方法・開催内容

1回の開催は18:00~概ね2時間、毎回2テーマを取り上げています。第3回までは集合研修、第4回以降はオンライン開催となっています。これまで以下のように8回開催しています。
原則3月、6月、9月の開催を基本としていますが、2020年は3月開催の直前中止、オンライン開催への切り替えなどがあり、変則的になりました。

第1回 2019.03.05 「DMBOK2 全体概要」「第1章 データマネジメント
第2回 2019.06.18  第1回と同内容
第3回 2019.09.04 「第3章データガバナンス」「第12章 メタデータ管理」
第4回 2020.07.28 「第4章 データアーキテクチャ」「第13章 データ品質

第5回 2020.09.14  第3回と同内容
第6回 2021.03.15  第1回、第2回とほぼ同内容

第7回 2021.06.23 「第5章 データモデリング~」「第8章 データ統合~」
第8回 2021.09.15  第4回と同内容

アンケート結果

このセミナーへの参加者には毎回アンケートをお願いしています。その設問の1つに以下があります。
「セミナーの継続開催を希望する場合、ご希望のテーマを教えてください(複数選択)」
過去8回分の結果を積み重ねると以下のようになりました。

これまで、このアンケートをもとに、希望者の多いテーマを取り上げてきました。今後も希望者が多くかつまだ開催していないテーマを中心に開催を継続する予定です。

参加方法

開催の1か月程度前にはDAMA日本支部のホームページに掲載しますので、そこから申し込んでください。当初はDAMA日本支部の会員以外は有料でしたが、第4回以降、オンライン開催に切り替えたのをきっかけに全員無料での参加が可能となっています。

またDAMA日本支部の会員の方には、講義録画を無料で公開しております。過去のセミナーに参加できず、過去のセミナーを視聴したいという非会員の方は、これを機に入会をご検討いただければ幸いです。

今後の予定

詳細は未定ですが、次回は2022年の2月か3月にこれまで取り上げた実績のないテーマでの開催を検討しています。また、過去開催分の無料視聴会なども検討したいと思います。

データマネジメントの学び方 ~海外コンテンツ活用例~

今回はデータマネジメントの学び方の1つとして、DATAVERSITYの活用例を紹介したいと思います。

DATAVERSITYに関してはDAMA日本支部公式ブログの過去記事(座学でデータマネジメントを学ぶには)でも紹介されておりますので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、データおよびデータマネジメントに関して幅広く情報が集約されている、Webベースの教育プラットフォームです。

有償で学ぶことができるトレーニングメニューに加えて、無償でも参照可能なブログやWebinarが多数公開されています。

DATAVERSITYhttps://www.dataversity.net/

この教育プラットフォームは英語で掲載されているため少しハードルが高いなと感じられている方のために、私が実際に参照してみてよいなと思った無償で閲覧できるWebinarを1つご紹介させていただきたいと思います。

DAS Webinar: Data Quality Best Practice

上記のWebinarはタイトルの通りデータ品質のベストプラクティスについて学ぶことができるWebinarです。例えば次のような要素について学ぶことができます。

  • データ品質の向上におけるビジネスルールの重要な役割
  • データ品質においてなぜビジネスルールの厳格化が重要なのか
  • データ品質の継続的改善に向けた4ステップ

データ品質に取り組む際、Null値の割合や、最大値、最小値などテクニカルな側面のアプローチに偏ることなく、ビジネスルールに主眼を置いて取り組むことの重要性について学ぶことができます。

データ品質とビジネス上のROIがどのような関係にあるのかについては、その説明に苦労されている方も多いと思いますが、具体的なユースケースも踏まえて学ぶことができるコンテンツになっていますので、データ品質の取り組みを自社内で推進していきたいと考えられている皆様の活動のヒントとしてもお役に立つ内容になっているのではないかと思います。

DMBOK2に加えて、こうしたWebinarで得られる事例や実践的な情報をかけ合わせていくことで、自社におけるデータマネジメント推進のヒントを一つでも多くつかんでいただければ幸いです。

DMBoK2の歩き方とデータガバナンスの位置付けを考える

筆者もDama-Jで設けられている各種分科会に参加している中で、最近新しく分科会参加してくる方々(主にベンダーやコンサルタント系)から出てくる参加理由として「仕事で出会うユーザ企業の人々が「データマネジメント知識体系ガイド(第2版)」(DMBoK2)を見ていて、自分たちもしっかり勉強しておく必要性を感じたため」という意見を聞くことが多くなっています。データをビジネス資産として扱おうという企業活動からすると、これは当然の流れであり筆者も喜ばしい傾向と捉えています。しかしDMBoK2そのものは知識領域を網羅的に解説した内容であり、初学者が手軽にその内容を理解するのに抵抗を感じるという読者意見も少なくありませんでした。

そこで今回の記事では、分科会活動へ参加する中で筆者が整理した、DMBoK2で説明しているデータマネジメントの全体像をビジュアルな形で理解を進めるための地図「データマネジメント歩き方マップ」について簡単に紹介し、一つの知識領域である「データガバナンス」の位置付けに目を通したいと考えます。(この「DM歩き方マップ」についてはEDW2020のビデオパック講演として筆者が紹介したものです(※1)。日本語版/英語版あり)

データマネジメントを具体的なものとして捉えるためには、それを構成する知識領域(機能構成)を個別に学習するだけでは不十分であり、それら知識領域の全体像(関連性)を理解する必要があるということが筆者の考え方です。この全体像を捉え、しかも個々の要素も見落とさずに眺めることができるようにしたいというのが筆者の目標であり、それを具体的に表現する形として作成したのが、この「DM歩き方マップ」でした(図1)。

図 1 DMBoK2 データマネジメント歩き方マップ 1.8版と知識領域対応図 (※2)

今やスマートフォン/PCの日常的利用の中で、地図を活用できることの便利さを否定する人は余りいないと思われます。それと同様にデータマネジメント(DM)という難題に取り組み、理解を共通化するためには、視覚的見方を可能とするDM地図が必要です。これを利用することでDMBoK2の知識領域(機能分野)の関連性理解を深めることができます。

(ここでは紙面の都合上、細かい議論には入りません)

図1は、機能分野の外部的関連性を表していますが、それに加えて各分野の直接の参照関係を表現したものが、参照関係図です(図2)。ここでは12の知識領域に加えて、他の5つの章を加えた合計17の章立ての内部関係性を表しています。参照関係は方向性(矢印の向き及び色使い)と関係の強さ(矢印線の太さ)で示しています。この図(DM歩き方マップ2)を参照することで、DMBoK2を読み解く上での章間の流れを離散的に推し量ることができます。

図 2 DMBoK2 各章の記事参照関係図(DM歩き方マップ2) (※2)

これらのマップ利用の例として、DMを考える読者の多くに感心の高いと考えられる、第3章「データガバナンス」を取り上げてみます。図1からデータガバナンス領域は各知識領域へ繋がる起点の話題であることが分かります。それと同時にDM活動を考える上での1.ビジネス戦略、2.EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)戦略、3.データ戦略といったビジネス活動に直結する戦略領域の話題はDM活動に対する入力となっていることを確認できます。つまり企業活動の上で、DMを推進することは目的ではなく手段であると改めて視覚的に説明できます。ビジネス目標を達成する、データ資産化を実現するために何をしたら良いかと考えてゆくことが、DM活動の方向性であるといえます。それであるからこそ、スポンサー、経営者も本気で取り組むべき話題であると捉えることができます。

(少し話が逸れますが、2年位前のIT領域に関わる記事で大手企業(複数)役員が「CIOは貧乏くじ」という発言をしたのを取り上げていました。そういう企業ではいつまで経っても、システムトラブルが絶えることはなく、システム関係者こそ被害者意識を持ちながら鬱々とした日々の仕事生活を送っているだろうと想像したことを思い出しました。)

マップ2から見ると、データガバナンス領域(第3章/DG)の延長として第15章、16章、17章が構成されていることが確認できます。DGを多く参照しているのは、参照データとマスタデータ(第10章)、データ品質(第13章)で、他の章からの参照も幾つか存在します。第3章はデータ品質を高め・維持に関する組織立て、基本的プロセスの考え方を説明しています。これを踏まえて各機能領域での具体的なDG活動は、それぞれの領域内に含まれるという構成で読み進めることがDMBoK2データガバナンス理解の道筋となります。

DMBoK2でのDM知識領域解説は網羅的な形であり、一部を除いて余り役割階層的、また時間軸的な説明を区別したものとはなっていないと見ることができます。それが、DMBoK2を頭から順番に読了しようとして読者が躓く一つの要因であると、筆者には考えられます。DM歩き方マップで見る景色は、実際には時間軸(ロードマップ要素)、整合性を踏まえた関係者の役割軸を意識する必要があります。データガバナンス要素を含めて、DM活動は組織としての継続的で総合的な有機的活動とすることが必要です(図3)。個人の努力に依存する形では、決してDM活動の理想に到達できないものと筆者は捉えています。人材の流動化が益々想定される社会では、確固として継続的なデータマネジメント活動の意味が大きなものとなることでしょう。

図 3 DMBoK2 を基本にしたデータマネジメント知識領域全体像 (※2)

組織的活動としてのデータマネジメントを成功させるために、DMBoK2で議論されているエッセンスが広く多くの立場の方々に理解され、納得性のある当たり前の活動として実践されることを期待しています。

尚、本記事で紹介したDM歩き方マップ等に関心のある方は、筆者に照会頂ければ資料ご案内します。問合せ下さい。

(メール: minoru.nakaoka(a)infolabyouyou.com メール発信時は、(a)部分をアットマークに変更下さい)

※1 EDW(Enterprise Data World)カンファレス2020は、当初3月にカリフォルニア、サンディエゴ市で開催予定されていたが、コロナ窩話題により集合形式実施は中止された。その際、主催者からの照会によりビデオ録画形式での実施参加問合せを受け、筆者はビデオパック向けの講演参加を行った(60セッション強のセッション参加あり)。

演題 “Walking Map of DMBOK2 : A Bird’s-Eye View to the Data Management World”

※2 図は何れも筆者のEDW2020 ビデオ講演で利用したものを抜粋している。(日本語表現に訂正して掲載)

[投稿者]中岡 実(インフオラボ游悠 代表/データマネジメントコンサルタント、ITコーディネータ、PMP、認定心理士)

データ管理は「集中」「分散」「ハイブリッド」

はじめに

このブログのタイトルを見て何を思い浮かべましたでしょうか? データガバナンス? メタデータ管理? マスターデータ管理? その他?
そのどれも正しいです。
DAMAの分科会でメタデータ管理がテーマの時に「メタデータ管理のアーキテクチャには、集中型、分散型、ハイブリッド型、双方向がある」と説明を受け、私は「どこかで聞いたことがあるな?」と思いました。
調べてみると同じような概念がDMBOKの各所にありました。
どこにその記述があるか? 全て解説を加えたいところですが、相当量になってしまいますので、今回は解説なしで項目だけ紹介してみます。

第3章 データガバナンス
データガバナンスのオペレーティングモデルタイプには以下の3種類があると説明されています。

  • 中央型 (集中型?)
  • 複製型 (分散型?)
  • 連邦型 (ハイブリッド型?)


第6章 データストレージとオペレーション
データベースアーキテクチャの種類には以下の3種類があると説明されています。

  • 集中型データベース
  • 分散型データベース
  • 連邦型データベース


第10章 参照データとマスターデータ
参照データとマスターデータの統合の基本的なアーキテクチャアプローチとして、以下の3種類があると説明されています。「集中」「分散」「ハイブリッド」とは異なるように聞こえますが、発想は類似しています。

  • レジストリ      (発想は分散型です)
  • トランザクションハブ (集中型です)
  • 統合アプローチ    (上記2つのハイブリッドと説明されています)


第12章 メタデータ管理
メタデータアーキテクチャの種類として、以下の4種類があると説明されています。

  • 集中型メタデータアーキテクチャ
  • 分散型メタデータアーキテクチャ
  • ハイブリッド型メタデータアーキテクチャ
  • 双方向メタデータアーキテクチャ


第16章 データマネジメント組織と役割期待
データマネジメントのオペレーティングモデルとして以下の5種類が説明されています。ネットワーク型と連邦型も広い意味でハイブリッド型と言って良いと思います。

  • 地方分権型オペレーティングモデル (分散型)
  • ネットワーク型オペレーティングモデル
  • 中央集権型オペレーティングモデル (集中型)
  • ハイブリッド型オペレーティングモデル
  • 連邦型オペレーティングモデル

本日は説明しませんが、どの集中型、分散型にも概ね同じようなメリットとデメリットがあり、その折衷案がハイブリッド型というのも概ね同じようです。

「だからどうした?」という話かもしれませんが、皆さんが今後DMBOK2 を読む際にちょっと頭の片隅に置いていただいても良いかと思います。

データドリブン経営とデータマネジメントの関係性

はじめに

今回はデータマネジメントとデータドリブン経営の関係性を考察してみたいと思います。

皆さんはデータマネジメントとデータドリブン経営にはどのような関係性があると考えますでしょうか。何となく関係がありそうではあるが、どう説明してよいか迷うなぁ。という感想を多くの方が抱くのではないかと想像しています。

今回ブログ執筆の機会をいただきましたので、皆さんと一緒に考えるひとつのきっかけになればと思い、どのような関係性があるかを私なりに考えてみました。

データマネジメントフレームワークとしてのDAMAホイール図

考えるに際し、まず最初にデータマネジメントに求められる知識領域を定めたDAMAホイール図をご紹介します。

(図1)

この図1はDMBOK2の第1章に記載されているデータマネジメントの知識領域を定義する「DAMAホイール図」と呼ばれる図です。


DMBOK2は17章構成で記述されており、各種のフレームワークを定義していますが、データマネジメント知識領域をもっとも良く表している図がこのDAMAホイール図です。

DAMAホイール図は中心にデータガバナンスが置かれ、各知識領域は成熟したデータマネジメントに必要な機能を示しています。

このホイール(Wheel)という言葉ですが日本語に訳すと「車輪」にあたりますが、 タイヤに例えると次のようなイメージ(図2)になるのではと思います。

(図2)

 

データドリブン経営とデータマネジメントの関係

次にデータドリブン経営という言葉をみていきたいと思います。

データドリブン経営とはシンプルに言えば従来型のKKD(勘と経験と度胸)に頼った意思決定から、データに基づいた経営的な意思決定にシフトすることと、定義できるのではと考えます。

また、データドリブン(DataDriven)を日本語に訳すと「データ駆動」にあたりますが、データを動力源(燃料)として、いかに迅速に経営的な意思決定を行うことができるかが 多くの企業の関心ごとにもなっています。

このデータドリブン経営をビジネスゴールに向かって進む車の運転に例えた場合、 その安全・安心・快適なドライブを下支えする車輪の位置づけとして、DAMAホイール (=データマネジメントの知識定義)が存在するのではと考えます。(図3)

普段、車の運転をしている際は目にすることがないため、ホイールの存在を意識することは稀ですが、非常に重要な役割を担っていることは車を例にすると想像いただけるのではないかと思います。

(図3)安全・安心・快適なドライブを下支えする車輪


現在、コロナ禍で私たちを取り巻く環境は急激かつ大きく変化してきています。このビジネス変化のスピードに追随してドライブしていくためにも、足元を支える車輪としてのDAMAホイールの内容を理解することはきっと皆さんのお役に立つものと考えます。

皆さんの所属する企業、または提案先、支援先の顧客は期待するスピードでデータドリブン経営を実現できておりますでしょうか。また、その足元を支えるデータマネジメントに関する取り組みはどのような状況でしょうか。

経営から思ったようなスピードが出ていない。間違った意思決定をしていないか不安だという言葉が聞こえたら、一度、DAMAホイール図を参考に自社の取り組みを点検いただくのも一案かもしれません。

ひょっとしたら、(図4)のようにデータマネジメントに関する考慮が欠けていて、多角形の車輪で走っていることに起因し、データドリブン経営が思うようなスピードで進んでいないのかもしれません。

(図4)



おわりに

データマネジメント知識領域を抑え、自社のデータドリブン経営のスピードを阻害している要因(車輪の不備部分)を見つけ、地道に1つずつ改善を積み上げていける企業こそが、真にデータドリブン経営を実践する企業に進化できるのではないかと私は考えます。

DMBOK2の11の知識領域にどういった内容があるのか俯瞰して学びたい皆さん、ぜひ、DAMA-Jの活動を体験してみてください。

一緒に意見交換できることを楽しみにしております。