デジタル・トランスフォーメーション(DX)とデータ・マネジメント(DM)③

今回は、Transformationのお話です。
またまた英語の語源からですが、Transformationは、Trans+Formの合成語です。
https://www.etymonline.com/word/transform#etymonline_v_16881 には、以下のように書かれています。
mid-14c., “change the form of” (transitive), from Old French transformer (14c.), from Latin transformare “change in shape, metamorphose,” from trans “across, beyond” (see trans-) + formare “to form” (see form (v.)). Intransitive sense “undergo a change of form” is from 1590s. Related: Transformedtransforming.
要は、Formを変えること、Formとは形や様式ということです。

ちなみに、語源という意味では、Dataの成り立ちは以下です。

つまりラテン語で与えるもの、もしくは与えられるものであり、事実や既成のものという意味ですね。ちなみに、Dataの単数形がDatumですから、DataはPeopleのように複数形として扱うのが正式とのことです(英語圏でも随分議論がありますが)

はい、失礼しました。Transformation話でしたが、DMBOKでこのことにかなり迫っているのが、第17章のChange Management(変革管理)です。2018年のADMCでも取り上げましたが、この章では以下がポイントだと思っています。

一番陥りやすいミスは以下のようなものでしょうか。
まず、変革は「人」から始まるということに真っ向から挑戦しるのが以下の発言です。
◆ DXには予算をいくら取ればいいのか計算しろ
◆ DXをやるにはまず組織を作らなければ
◆ DXをやってくれるITベンダーを連れてこい
◆ DXができるソフトウェアを調達しろ、予算は取ったから
◆ 日本をデジタル化するぞ、そう「デジタル庁をつくればいいのだ」(笑

次に斜めに構えている人が言う言葉として・・・
◆ DXなんてどうせまたITベンダーが作ったBuzz Wordだから、やっている振りだけしておこう
◆ うちの会社は昔からDXはやっているよ。PC入れたのも早かったしね
◆ うちの会社は伝統を大切にする、DXはうちには合わないよ
◆ 書類を全部ScanしてDX・・・という古いジョークは忘れましょ(汗

余談ですが、世の中には変わらなくてもいいことが不自然に変わることがあります。例えば、
◆コンビニでビニール袋をくれなくなった(特に日本ではこれが地球温暖化を防ぐのにほぼ何の役にも立たない。つまる単なる値上げ)
◆ そもそも日本の水道水は一番安全なのに、なぜかミネラルウォーターを買うようになった
◆ (ここは賛否両論ありますが)喫煙人口が激減したのに肺がんは減らない?? ただ・・・人に迷惑をかけてはいけないので非喫煙者の前では吸わないように(汗
◆ ゴミの分別が余計にコストがかかるって知ってました?

ちなみに上に上げた変革を起こすのには莫大なマーケティング戦略、洗脳、プロパガンダが必要でしたけど。 こんな変化を起こせるなら、Digital Transformationも簡単ですねー。

一方で、Backward Compatibilityという言葉があります。ITの方はよく知っていると思いますが、ソフトウェアのバージョンが上がっても、昔書いたソフトは依然としてそのまま走るということ。特にMicrosoftはこのコンセプトを重視してきました。Windowsのバージョンが上がっても昔のソフトはそのまま走る。

皆さんお気づきのように、いくら何でも20年前のソフトは走らないよねー。ただ世の中のTransformationはもっと遅く、Backward Compatibilityに従っているようです。JR(昔の国鉄・・・知ってました?)でSuicaがメジャーになった今も切符をまだ買えますよね。コンビニでスマホ決済ではなくて現金でモノが買えますよね。

私に真面目にTransformationとは何かを言わせると、それは「脱皮」だと思います。昆虫などは一生の内にでも脱皮しますが、 生物は何世代にもわたって進化します。多くの場合は、Backward Compatibilityは保たれないようです。つまり、いったん蝶になった幼虫のようには生きられないし、人間はもう水の中では呼吸できないですよね。

DMBOKの第17章でも、人々に変革についてきてほしいのなら、戻り道をふさぐことだと書いてあります。つまりBackward Compatibilityへの道を断つということですね。

でも駅で切符が買えなくたったらどうしたらいいかわからないなー。

ESGとデータマネジメント

昨今、ESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))への取り組みを強化する企業が増えてきています。

今まで、ESGとデータマネジメントはあまりつなげて捉えていなかったのですが、先日、ESGへの取り組みはデータ活用とも言える、という話を耳にする機会があり、認識を新たにしました。ということで、今回はESGとデータマネジメントについて書いてみたいと思います。

まず、ESGへの取り組みが強化されている背景ですが、機関投資家にESG投資という考え方が浸透してきたことがあります。これは、財務情報だけでなく、ESGへの取り組みも考慮した投資の方法で、企業の財務利益とESG活動を相反するものとして捉えていないことが特徴です。ESGに取り組んでいる企業の方が、中長期的な業績が良くなる&リスクが低いという考え方をとっています。

では、こうしたESG投資の際に、投資家はどのようなデータを活用しているのか。ここでは、投資家へのデータ公開の媒体の一つである統合報告書を見てみたいと思います。

統合報告書は、企業が、財務資本だけでなく、知的資本、人間資本、社会関係資本、自然資本といった非財務の資本も含めて、どのように長期的に価値を創造していくかを説明するもので、非財務の指標の例としては、下記のようなものがあります。

CO2排出量
社外取締役比率
女性取締役比率
離職率
、、、

上記はごくごく一部ですが、すぐにデータとしてとれそうなものと、そうでないものがあるのではないでしょうか。さらに、すぐにデータがとれそうな部門とそうでない部門があるかもしれません。

CO2排出量について考えると、物流、工場の生産、拠点の電力消費、グリーン調達など、企業全体で出そうとすると、多くの部門に関連する指標になります。

実態を表す、一貫性のある品質の高いデータを元にすることで、投資家もさることながら、自社の長期的な価値創造のためによりよい意思決定ができるようになるはずです。

部門横断でデータを収集・統合し、品質の高いデータをアウトプットする、、、データマネジメントの知識、技術が多いに役立つのではないかと思います。

最後に、従来、環境に関する活動は、利益とは反するが、企業の責任として実施すべき、という考えが一般的だったと思います。今更ですが、大分様相が変わってきており、良い方に動いているなと感じています。一過性のブームではなく、定着した考え方になっていくことを期待しています。

データ品質分科会を続けてきて…

 品質分科会は2013年から開催されていて、DAMA-Jでは最も古い分科会です。よくもまぁ飽きもせず7年もやってきたものだと我ながら感心しています。

 ただ、参加されている方は一部の方ですし、新規入会の方も多くなってきましたので、期変わりのこの時期に改めてこれまでの経緯を含めて、ご紹介をしたいと思います。

 品質分科会は、もともとは第4分科会「意思決定に寄与するデータモデル研究会」の派生分科会として発足しました。                   第4分科会は、経営層が意思決定をするに当たってデータを活用するために必要なデータモデルとは何か?ということを議論・研究する分科会でしたが、そもそも経営層がデータを活用して意思決定をすることが少ない、データ活用するためのデータモデル整備に投資をすることに理解を示さないなどの点が問題で、どのように理解してもらうかというような議論をしていました。

 それはそれで重要な議論ですが、そこに一足飛びに進むことは日本の現状では難しいだろうとの思いもあり、それならまずは経営層にデータ品質問題の認知をしてもらい、品質改善マネジメントからデータマネジメントの機運を作っていけないかということで、データ品質分科会を発足させていただきました。

 品質分科会で、まず最初に取り組んだのは、DMBOKのデータ品質の章を読み込んで、具体的な内容と対比して理解することでした。 DMBOK1のたかだか60ページの読み込みでしたが、抽象的な表現が多いDMBOKの記述は難解で、参加者に一定の理解が得られるのに実に丸3年かかってしまいました。その頃は成果物を産まない地味な分科会ということで不人気分科会でして、2-3名の参加での開催も少なくありませんでした。

 しかし、それでも続けたおかげで記載内容の意味が整理され、各アクティビティで実施すべきことがはっきり見えてきたのだと思いますし、その後のDQワークシートのまとめにも大いに役に立ちました。

 DQワークシートについては、2020-08-03の井桁さんの記事に概要が記載されていますのでここでは割愛しますが、DMBOK2の内容反映まで含めてやはり4年かかってしまったもののデータ品質マネジメントを行う上では初めての具体的資料ができたのではないかと思っています。今後は、このワークシートの使い方を平易にまとめた資料が作れれば良いなと考えています。

 と、これまでの分科会活動を振り返って思うところは、DMBOKはさらっと読めば答えが得られるというものではなくて、活用するには十分な理解や解釈が必要だ、ということです。

 DMBOKで使われる用語やレトリックに含まれる意味は多岐に渡り、具体的な事例でどうしたら良いかと考えた時に有識者でさえ「ケース・バイ・ケース」という回答になることも多いようです。 しかし、それでガッカリしてはいけません。DMBOKで語られていることの本質的でシンプルな意味を解釈し理解できていれば、具体的な課題にぶち当たった時に、その理解を軸にどうすれば良いかの応用が効くと思います。

 このスピードが求められる時代、すぐに役に立つ何かを求められがちですが、しっかりとした知識体系をわが物とするためには「急がば回れ」でDMBOKをしっかり読まれること、読んだ解釈を多くの方と議論して理解することが重要なことだと思います。 DAMAの分科会は、今後もそういったことができる数少ない場でありたいと考えています。

政府の「デジタル・ガバメント実行計画」に”データマネジメント”が明記されたこと

令和2年12月25日に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」では、行政機関がデータマネジメントを推進すべきことについて明確に言及されました。
政府関係者の皆さんやCIO補佐官の皆さんに対して、10年以上長きにわたって何度も何度も行政におけるデータマネジメントの必要性を訴え続けてきた私としては、「うれしい」という素直な気持ちと「やっとか」という忸怩たる思いが交錯する複雑な心境です。

実行計画では以下のように記されています。

※「デジタル・ガバメント実行計画」(令和2年12月25日 閣議決定)より該当箇所抜粋

(6)データマネジメントの推進(◎環境省、内閣官房)
4.8.7 行政データ連携の推進
行政データ連携の推進、行政保有データの100%オープン化を効率的・効果的に進めるためには、各府省において保有するデータの全体像を把握し、連携・オープン化するデータの優先付けを行った上で、必要な情報システム・体制を確保し、データの標準化や品質管理等を組織全体で進めていくことが必要である。
そのためには、そうした一連のプロセスを体系的に進めるための戦略を定め、取り組んでいくことが重要である。
環境省では、政府におけるデータマネジメントの試行的な取組が進められており、今年度中に「環境省データマネジメントポリシー(仮称)」を策定し、 2021 年度(令和3年度)以降同ポリシーに基づき行政データ連携の推進や、環境省保有データのオープン化の取組を進める。
こうした取組の実施状況も参考にしつつ、政府におけるデータマネジメントの在り方を検討する。

これまでも「デジタルガバメント基本方針」や「官民データ活用推進基本法」などの公式な取り組みの方針等もあったのですが、「データマネジメントの推進」や「各省庁において保有するデータの全体像の把握」、「データの品質管理」といった表現が入ったのはこれが初めてではないかと思います。

データマネジメントを適切に行い、縦割りの行政サービス統合化により国民の利便性向上や行政事務の非効率の排除のために徹底的にデータを活用していかない限り、日本の国力の低下を招くことは火を見るよりも明らかです。
行政データが各府省、各手続き単位でまったくつながっていないことがコロナによって白日の下にさらされ、様々な不都合や無駄な支出が税金で賄われたことを国民が目の当たりにしました。
今回の「デジタル・ガバメント実行計画」がこの惨状を少しでも改善し、今度こそ、データマネジメントに対して政府が本気で取り組む契機となることを切に願っています。

DAMA日本支部 企画担当理事
JDMC事務局長 兼 理事
株式会社リアライズ 代表取締役社長
大西 浩史